◆  友情 〜秋桜のバラード〜 2004年

◆公演時期   2004年8月13日〜15日
◆会場 東京 アートスフィア
◆原案 和泉 聖治
◆脚本 布施 博一
◆演出 田中 林輔
◆演出補 吉村 ゆう
◆美術、照明 有馬 裕人
◆美術 保坂 禎英
◆音楽 津島 利章
◆効果 佐藤 日出夫
◆振付 竹下 江里子

あらすじ

コスモスの花が咲く時、北海道から転校してきた島崎あゆみは、白血病に冒され、
適合するドナー(骨髄提供者)が現れるのを待ちわびる日々を送っていた。
あゆみの転校してきたクラスには、森山信一という周囲から孤立した少年がいた。
脅かすつもりであゆみにナイフを向けた信一であったが、
その瞬間、あゆみが毅然と言い放った。
「死ぬことなんて怖くない。どうせ私はあと一、二年で死ぬんだから」
クラス全員がその事実を知り、生徒たちに動揺が広がる。
そして、クラスに変化が現れ始めた……
(パンフレットより一部抜粋)

観劇感想

もう、6年近くもやっている舞台なんですね。
私はこの舞台を観るのは初めてです。
基本はチャリティー公演です。
CDやパンフレット代も一部がチャリティーとなっていますので、
観劇の際は、ぜひお買い求めいただきたく思います。

先にちょっとネタバレをします。
抗ガン剤の副作用で髪の毛が抜けてしまった島崎あゆみは、
みんなの前に出たくないと言います。そして、気持ちもどんどんふさぎがちになります。
そこでクラスの生徒たちが、あゆみの不安な気持ちを取り除こうと、
全員が坊主頭になります。もちろん、男の子も女の子も。
男の子はともかく、女の子も丸坊主ですからね。勇気がいることでしょう。
このことがあるため、よくマスコミにも取り上げられます。
この場面があまりにも印象的であるため仕方ありませんが、
印象的なシーンは、他にも多数あります。
『友情』の舞台に感動し、本人が出たくても、事務所的にNGという子も数多いとのことです。
ちなみに、この実話はアメリカであった話を元にしています。
日本ではありません。

最初は、高校演劇フェスティバルのようなノリで、大丈夫かな〜と不安でしたが、
じわじわと感動の舞台へと引き込まれていきました。

物語的に教育的な要素もあり、説教じみてはいます。
こういうことに拒否反応がある人はダメでしょうね。
このあたりは、心を清らかにして、純粋な気持ちで観劇することが大切でしょう。
私としては、押しつけがましい教育シーンはいただけないのですが、
先生が主体でどうこうするのではなく、生徒たちが自主的に行動するので、
その点に関しては、偏見を持つことなく素直に観ることができました。

病的なこと、差別、自殺、在日問題等、いろいろと考えさせられる舞台です。
頭では理解しているものの、
舞台上で直接的に言葉を発せられると、心底にグッとくるものがあります。
押しつけがましいことは百も承知ですが、自分の心の中にあるよどんだ気持ちを捨て、
一度は、素の心で、この舞台が発するメッセージを受け取ることも必要でしょう。
人間はみな、いろいろなしがらみの中で悩みをかかえて生きていますから。
そんなセンチメンタルな気持ちにさせられる舞台です。

おそらく、ひとりひとりに単独のマイクがありません。
集音マイクでしょうか?
たまに聞き取りずらいところもありましたが、
基本的にはプロの役者さんたちばかりなので、マイク無しでも違和感ありませんでした。

場面、場面、好きなところがありますが、私が一番すごいな〜と思ったところは、
後半、ひとりひとりが自分自身のことを告白するところです。
万引きの話。
ここは明るく、しかし反省をする。なかなかバランスがとれていて良かったと思います。
万引きは窃盗罪ですから、犯罪です。
だからといって、暗く、ジトジトした、ただ単に反省を促す演出ではなく、
学生の立場から、やや明るくする告白する演出は好感が持てます。

やや明るい告白から、一転、鈴木幸子役の岩田麻衣子さんの告白シーンが始まります。
この時まで、彼女は静かで暗い役柄。
他の生徒たちが明るく遊んでいる場面でも、ひとり暗くうつむいていました。
今まで、ひっそりとしていた彼女の告白。
義理の父親、暴行、自殺未遂。耳をふさぎたくなるようなこともあります。
回りの生徒たちも、それを聞き、唖然、呆然として、彼女の言葉に聞き入ります。
このシーンのみならず、生徒たちの告白シーンは本当に感動ものでした。
若い役者同士の演技のぶつかりあいという感じ。
気持ちが入っていて、気持ちの高揚するテンションがすごく高いんです!
この気持ちの入れようを、一日一回公演でさえたいへんなのに、
昼、夜、二回公演もありますからね。気持ちの高揚をどう持っていくのか?
大変だろうな〜と思いました。

私的に好きなシーンのひとつが、森山夫妻の会話シーン。
ここが秀逸!!
森山くんの父親、正一役をドン貫太郎さんが演じているのですが、
演技なのか地なのかはわかりませんが、のらりくらりとした演技が抜群でした!
韓国人から日本人に帰化したという設定もあり、
やや、しどろもどろの喋りは演技なのでしょう(ですよね?)
重い雰囲気の漂う舞台なので、明るいシーンはすごく光ります。
さらには、母親、勝江役の大和なでしこさんとの会話シーンも楽しかったです!
この場面がないと、本当に重たく暗い舞台になってしまいますから。

ただ、このシーンも明るいだけではありません。
韓国人であるにもかかわらず、日本人の母親と結婚するために、帰化する父親。
その経緯を知り、「韓国人の誇りはないのか!」と反発する信一。
信一には在日ということで子供の頃にいじめられ、
強くなろうとして不良になった・・・という経緯がもありました。
複雑な感情がからみあうこのシーンも、名場面のひとつです。
在日問題についても、ここで考えさせられることになります。

島崎あゆみが亡くなるシーン。
両親に看取られるのですが、静かに、そして淡々としてシーンが終了します。
場面変わって、森山くんの家。
ここで森山信一くんが電話を受け、初めてあゆみが死んだことを聞かされます。
そしてその時の彼の慟哭、悲しみの叫びで、
水風船が破裂したかのように、悲しみが一気に会場内へとなだれこみます。
ここの演出も、とても良かったです。

基本的に、華やかな舞台セットはありません。
ただ、舞台のエンディングでは島崎あゆみが愛したコスモスを表現するために、
画に描かれた、たくさんの垂れ幕が掲げられていました。
この演出は、本当に素晴らしいです!!

気になった役者さんは…

主役、島崎あゆみ役の高橋あゆみちゃん。
失礼ながら、写真よりも実物の方がずっと可愛いです!
おそらく、生徒の出演者の写真は、わざと素朴さを売りにしているような気がします。
そういう戦略なのでしょう。

主役ということで、セリフもたくさんありましたが、
私が見るぶん、特に噛んだ部分はありませんでした。
演技もなかなか頑張っていたと思います。
見た目は素朴〜な感じです。
ですが、前半部分の島崎あゆみは、気が強く、積極的。
一本すじが入った女の子の演技をうまくこなしていました。
海岸での森山くんとのラブシーンも積極的な女の子を演じていました。
そして、後半部分。
特に印象的なのは、体力が消耗してベットで何度も気が失ってしまう場面。
観ている方としては、死んでしまったのではないか?と、ハラハラドキドキものでした。
この難しい表現の演技はとても素晴らしいものがありました。

森山信一役の 本多亮太くん。
どちらかというと、かなり荒削りな不良役でした。
とりたててすごく上手い演技というわけではありませんが、
まずまず無難にこなしていたと思います。
あゆみとの海岸のシーン。
動揺している演技は見応えありました。

話しずれますが、彼が不良の時に着ている学生服に赤のTシャツ姿。
今時いるんでしょうか?(笑)
ちょっと時代錯誤のような感じがします。
まるで、漫画 『ドカベン』の岩鬼です(笑)
このあたりは、もうすこし時代にあった服装を考えた方が良いと思います。
と思ったら、最近の金八先生の不良役も、学生服に赤のTシャツ姿なんですね。
ちょっとビックリ!

北島正役の川島豊徳くん。
医者の息子という設定もあり、真面目な役です。
真面目で誠実な演技、見応えありました!
ルックスはカツラのせいかもしれませんが、かなりカッコイイです!
男子の中では、トップクラスでしょう。
私的には一番目につきました。

谷 康一郎役の横堀亮太くん。
お笑い系の役です。
漫才コンビ片割れですが、けっこう印象に残りました。
演技も良かったですよ。

鈴木幸子役の岩田麻衣子ちゃん。
クラスの中でも一番暗い役で、前の学校で自殺未遂をしたという女の子の役です。
クラスのみんなが明るい時でも、いつも暗くしなければなりません。
演技は、けっこうたいへんだったことと思います。
そんな暗い役をひじょうに丁寧に演じていました。
ルックスは、松本有希子ちゃんをさらに少し物静かにした感じでしょうか?
でもでも、すごく可愛らしい女の子です。

舞台が終わり、出演者が出迎えてくれるのですが、
お母様方が、麻衣子ちゃんのところに駆け寄る姿が多かったです。
あの、一応演技なんですけど(笑)
ただ、その雰囲気から、
本当に自殺未遂をしたのではないか?と伝わってくるんですよ、彼女からは。
それゆえに、他のお客さんたちも感情移入したのかもしれません。

岡田剛義くん。
う〜ん、それほど出番は多くありませんでした。
珍しく(?)おっとりとした役どころです。
演技的には、特に違和感はありませんでした。普通ですね(汗)
ひとつ思ったのは、役柄が三男の修宏くんに雰囲気が似ていました。
多少は参考にしたのかな?
おっとり系の役ということもあり、セリフは少なめです。

話はちょっとズレますが、カツラについて。
岡田くんもそうですが、みな坊主のために普段はカツラをつけています。
このカツラがすっごくカッコイイんです!
というのも、地毛はクセがあるため、
なかなか自分の思い描く髪形にならないことがあります。
ところが、カツラを使うと、誰もがカッコいい髪形に出来るため、
岡田くんでさえ、普段以上のカッコ良さを発揮します(爆)
これは嘘ではないです!
カツラによって、外見がこれほど変わるとは・・・という感想でした。

野本信吾役の川野太郎さん。
プロの役者さんなので言うことなしです。
誠意があり、熱血漢あふれる先生を演じてくださいました。
どんな舞台でも手は全く抜かない!!という雰囲気が伝わってきました。

森山正一役のドン貫太郎さん。
前述しましたが、本当に今回の舞台では印象深いです。
あの独特な雰囲気は心に残ります。

総括
公演時間は休憩無しで約2時間20〜30分くらいです。
私が見た時は体調が万全で、睡魔が襲ってくることはなかったのですが、
他で仕事等をして、この舞台を見る人は疲れで睡魔が襲ってくることがあるかもしれません。
休憩あっても良いのではないかな〜と思いました。
ただ、雰囲気というか、舞台の流れが切れてしまうこともあり、いちがいには言えません。
マスコミ等で何度も取り上げられることも多い舞台ではありますが、
ぜひとも一度は観劇しておくべき舞台だと思います。


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