◆  The Musical AIDA アイーダ  2009年

◆公演時期   8/29→9/13
◆会場 東京国際フォーラムC
◆脚本・演出 木村信司
◆作曲・編曲・音楽監督 甲斐正人
◆振付 麻咲梨乃
◆ステージング 竹邑類
◆美術 大田創

あらすじ

古王国時代のエジプト
ファラオが支配する強大な国エジプトは、
宿敵エチオピアと再度の戦いを起こそうとしていた。
戦士ラダメスは自分こそが将軍に選ばれるのではないか?という期待に胸を踊らせ、
エジプトの勝利とともに、恋するアイーダに愛を告げようと決心する。
アイーダはエチオピアの王女。
エジプトに囚われの身になった彼女だったが、
祖国の敵と知りつつも、しだいにラダメスに心惹かれていた・・・
(パンフレットより一部抜粋)

観劇感想

チケットが入手困難で、当日券もごくわずかという大盛況ぶりに驚きました。
基本女性9割、男性1割ぐらいでしょうか?
私が観た回は1、2、3階席ともに満席。
ものすごい混みよう。
安蘭けいが、宝塚を引退して初めての公演ということもあるけれど、
それにしてもここまでの集客力とは驚きます。

オーケストラあり。
これがとても良く響く。
出演者全員が歌唱力抜群なので、相性がものすごくバッチリ。
歌う方も、演奏する方も、お互いに感化して競い合える感じ。

2幕構成。
1幕だけで、1時間20分ぐらいでしょうか?
全て合計で約2時間30分強かな?

この舞台、基本は宝塚歌劇の作品なんですね。
それを改めてオリジナルミュージカルとして公演。
脚本・演出が宝塚版と同じく木村信司、作曲・編曲・音楽監督に甲斐正人。
宝塚歌劇の作品をさらに昇華させる感じでしょうか?
劇団四季も同じ題名の作品をしていますから、
そことも、ま〜いろいろ複雑ですね。

まず思ったことは、この舞台、基本は歌。
とにかく歌がメイン。
もちろん、演技、普通のセリフもありますが、歌が多い。
1日1公演ぐらいなら、なんとか頑張れるかな〜とは思いますが、
2公演ある日もありますからね。これは大変。
ソロが多く、舞台上にたったひとり。
東京国際フォーラムの舞台は広いですから。
そこを自分ひとりの歌で観客を魅了させるというのは、
それだけの歌唱力を持っていないとできません。
メインキャスト全員が、この歌唱力をそなえもつレベルの高さ。

で、とにかく、私が一番印象的だったのは、ラダメス役の伊礼彼方
失礼ながら、初めてお名前を拝見しました。
ミュージカル「テニスの王子様」が舞台デビューなんですね。
いやっ・・・・・これはすごい。
べらぼうにすごい。
圧倒されました。
いきなり上半身裸で登場するので、そのインパクトは絶大。

まず肉体美が物凄くすばらしい。
鍛えてますね!
舞台で上半身裸ですから、魅せる部分は当然必要。
普段の運動以外にも、いろいろな方法で鍛え上げたことと思います。
演技もすばらしい。
目の強さ、熱い演技、訴える姿、どれをとっても見応えあり。
ラダメスの真っ直ぐとした純粋さ、生真面目さ。
そして、アムネリスの気持ちをわかっていながらも、
アイーダへの愛を貫きとおす意固地さ。
女性は間違いなく惹かれるでしょう。
特に最後、ネタバレになるので詳しくは言えませんが、
大声で咆哮する場面は、悪寒が走るほど。
いい叫び声・・・
背中で演技をしています。

カツゼツバッチリで、体の切れもある。
ピシッ!ピシッ!と切れがあって、けれみんがない。
で、最後に歌唱力。
すごいんですけど・・・ええええ〜〜〜!!
ほんと、驚くぐらい凄い。
動き回りながらの歌もありますから。それでいてこの歌声。
超人的に素晴らしいと思う。
今回、主役はもちろん安蘭けいですが、
私としては彼の出番が多いこともあって、伊礼彼方が主役に思えてしまう。

一度観た人は、間違いなくこの人は伸びるな〜と感じると思う。
ミュージカル界、伊礼彼方の名前は、
今後間違いなく嫌でも出てくるでしょうね。
若手としては超ウルトラ有望株、間違いなし。
というか、今後彼が背負っていくかもしれない・・・なんて思ってしまうほど。

殺陣もけっこうあります。
棒というか、ヤリを使った殺陣。
ダンスもありますが、本当にひとつ、ふたつぐらいのナンバー。
「ここはダンスのナンバーですよ」
というメッセージがある感じ。
舞台進行、流れの中のダンスシーンとはやや異なると思う。
エジプトの女官と、
エジプト軍の凱旋帰国パレードのようなところが印象に残っています。
今回、舞台セット、衣装も物凄く豪華ですね。
衣装は配色がきらびやかで、とてもまぶしい。
金というイメージを意識しているし、青も強かった。

セットはピラミッド。
すごいセットだ・・・しかもこれが真っ二つにわかれます。
これは驚く。
私の場合、「北斗の拳」サウザーの聖帝十字陵を思い出してしまうのが痛い(汗)
でも、そんな雰囲気。

各ミュージカルナンバーの歌詞ですが、
意外と単純な言葉の繰り返しのシーンが多くありました。
このへんは宝塚っぽいですね、やはり。
「私は○○〜」みたいなノリ。
私にしてみると、
「当たり前の言葉、繰り返しすぎ・・・」と思ってしまうのですが。
子供でもわからせる、という意味合いもあるのかな?

前述しているとおり、ひとりで歌っている場面が多く、
歌い終わり、ふとした瞬間に多数の人間がいる・・・
という突発的な演出も印象深いです。
観ている方にしてみると、
今までひとりだったのに、突然たくさんの人が現われたように思えますから。

後半は特にラブストーリー重視。
戦争の連鎖、定義等、いろいろ考えなければならない話しもありますが、
主体はやはり、アイーダとラダメス、アムネリスの三角関係ラブストーリー。

気になった役者は・・・
みなさんプロなので、本当に気になった人だけです。

アイーダ役の安蘭けい
愛するラダメスが、エジプト軍の司令官になってしまい、
生き残ってほしいが、それは自分の国エチオピアの敗北を意味する。
そのジレンマを演じる・・・というのがこのアイーダ。

歌唱力は、ものすごいですよ。
驚くべきほど。
プロの歌い方だな〜すぐにわかります。
捕らわれの王女ということもあって、
主役でありながらこの舞台ではやや地味な存在。
そのぶん、アムネリスのANZAが輝く太陽になる感じ。
これは明らかに意図して演じていると思います。
なんとなく、「ガラスの仮面」の「ふたりの王女」、
アルディスとオリゲルドみたいな対比にも思えました。

アムネリス役のANZA
過去にミュージカル「美少女戦士セーラームーン」の月野うさぎを演じていて、
とても有名ですよね。
久々に観たのですが・・・
ものすごくうまくなっていて驚きとしか言いようがありません。
ファラオの娘ということもあり、威厳に満ちた立ち振る舞いは素晴らしい。
そしてとにかく、歌。
歌唱力がすばらしい。
安蘭けいには、たしかにやや劣るかもしれませんが、
普通に聞いていてそれほどの差は感じられません。

ファラオ役の光枝明彦
めっちゃうまい・・・笑ってしまうくらい素晴らしい歌声。
プロの中でもトップクラスでしょ?この歌声。
やっぱり本物。プロの歌声を聴くのは心地いい。

アモナスロ役、沢木順
最高すぎる!
「森は生きている」の老兵役や、
アルゴミュージカル2008「花の海 花いろの風−里山小学校5年1組でもおなじみ。
エチオピアの王という役ですが、威厳ある態度・・・だけでなく、
後半は気が触れる演技もあり〜の、さらにもうひと波乱あり〜の、
最後は・・・と、盛りだくさん。
独特な役柄。
ということで、沢木さんの演技バッチリです。
超ハマリ役。
あの独特な雰囲気が、そのままこのアモナスロ役にあいますから。
おそらく物凄くやりやすかったでしょう。
こういう、ひとくせ、ふたくせある役は、沢木さん大好きでしょうね。

おそらく唯一の子役はエチオピア囚人(マーリス)役の小林風花
エチオピア囚人は4人一緒に登場することが多く、
さらにアイーダの安蘭けいと関わることも多いため、頻繁に登場します。
ボサボサの長髪、焼けた肌、暗い雰囲気と、
一見するだけでは小林風花と確認できないほど。
素晴らしいキャストにスタッフ、大きな舞台、大勢のお客様、
その中で演じられたというのは本人にとって物凄い経験になったことと思います。
囚人役ですからね、それは難しいもの・・・

子役レベルで、歌唱力には前々から定評のある彼女ですが、
やはり、他が全て大人のメンバーで、しかもレベルの高い歌唱力が続くと、
彼女の歌声でさえ、まだまだ。
それが大人、そしてプロの声域なんでしょうね。
間違いなく、これからさらに努力し続けるでしょう。

総括
とにかく歌がメインの舞台。
戦争のはかなさを訴える舞台でもあるけれど、
やはり後半はアイーダとラダメスのラブストーリー的意味合いが強い。
女性受けする舞台だな〜と思いました。
男性だと、もっと戦闘シーンやら、
戦争に至る深みとか必要になってしまいますから。

アイーダ役の安蘭けいの歌声は本当にすばらしいけれど、
それにも増してラダメス役の伊礼彼方が、とにかく強く印象に残った舞台。

トップ     観劇一覧     キャスト     女優