公演時期 | 2014年10月25日→11月9日 |
会場 | 池袋サンシャイン劇場 |
作 | 金沢知樹(劇団K助) |
演出 | 三宅裕司 |
あらすじ |
昔、町内に必ずひとりは、他人の子どもでも、悪いことをすると親身に叱る 「怖いおじさん」、いわゆるカミナリ親父がいた。 その存在が消え去ってか、未成年の事件が多発していく。 そこで政府は一大プロジェクト「Mr.カミナリ」法案を難産の末、確立させる。 亡くなった人を人造人間と化し、 いわゆるカミナリ親父を若者に対抗させようと言うわけだ。 過去の記憶を抹消、姿、形も変えて誕生した「Mr.カミナリ」 当初は政府の予想通り、若者の犯罪が減少していったのだが、 抑圧された若者にも抵抗力がつき、逆に反抗。 とりたてて武器を持っていない「Mr.カミナリ」たちは排除されていった。 事態を重く見た日本政府は、「Mr.カミナリ」の強化版、 いわゆるカミナリワイフを投入。 見た目はよくしゃべるおばちゃんでしかないが、 彼女たちのツッコミ(腕)には高圧電流が流れており、 相手に電気ショックを与える機能があった。 これにより、再度若者たちの犯罪率も減少。 用済みと化してしまった「Mr.カミナリ」たち。 そこで政府は、彼らを教育現場へと出向させ、 先生や職員として働くこととなった。 近未来、とある教育現場。 子供たちに「道徳」を教える「Mr.カミナリ」がいた・・・ |
観劇感想 |
ラッキーにも前から4列目で観劇。 休憩無しの2時間。 ゲスト出演あり。 私の回は桜井玲香(乃木坂46)でした。 去年は観ることができなかったので、2年ぶりの観劇。 まず思ったことは客層。 中高齢がひじょうに多い。 一番資金力があるターゲット層ではある。 それはわかっていても、やはりこれからのことを考えると、 若い観客 ち増えさないと今後が大変なような気もします。 それゆえなのか、どういう理由かはわかりませんが、 今回はゲストとして桜井玲香(乃木坂46)が出演。 あくまで私の観るところ、演技は普通。 舞台特有の声ではないので、声は気になりました。 ゲスト出演なので、こういう声質はアリだとは思います。 ただ、もし今後彼女がグループを卒業して一人立ちし、 いろいろな舞台をやっていくうえでは、発声練習が必要になるでしょう。 あくまで大きな舞台で、ゲスト出演として許されるレベル。 アイドルグループは合唱ばかりで、ソロの歌がほとんどなく、 口パクなのか、本当に歌っているのか、その場ではわかりません。 ただ、彼女は生歌。 とりたてて、めちゃくちゃうまいっ!ってわけではありません。 私から言わせてもらうと、普通に歌が聞けるレベル。 というのも、彼女の両脇に「きんかん」(白土直子、丸山優子)がいますからね。 舞台上、プロレベルと比べるのはおこがましい。 ただ、表情付けはいいと思う。 視線、瞳の動かし方が自然で柔らかい。 ルックスは本当にかわいいし、スタイルもいい。 ゲスト出演ですが、ほぼメインクラス。 それを考えると、凄く頑張っていると思う。 本格的な舞台女優とは、また違うベクトルですが。 今回のお話しの前提として、演出の三宅裕司氏の言葉、 恋愛に対する興味を失い、 異性と会って人間としての経験を積むことを放棄してしまった「恋愛ニート」 スマホをもっていないと生きていけない若者ばかりで、 FacebookやLINEでつながっていたがる。 すぐに繋がれるという文化は、 同時に誰かとつながらないと一人では何もできないという文化。 そういったものの答えを探すために、 「昭和のカミナリ親父」と「60年代の音楽」に救いを求めてみました。 舞台の冒頭、とある小学校に赴任している人造人間のMr.カミナリ、KANDA(三宅裕司) 教室での子供たちは、ヘッドホンをしていて、教科書ではなく、ノートパソコンをカタカタ。 黒板を使っての「道徳」の授業も、子供たちの耳に届いているのか・・・ 終業のベルがなり、教室を退出する子供たち。 その中のひとりがつまずいて転ぶが、誰ひとり助けようとしない。 ふと、教室に貼りだされている政府のスローガンを見つめるKANDA。 「和より、個を・・・」 ひとりひとりの個性を優先するあまり、本来日本にあった「和」が失われつつある。 そういった意味合いがあります。 みんなで歌う、という合唱も政府から禁止されているため、 地下の秘密施設で他のMr.カミナリたちとともに隠れて親睦会。 そこへ、この学校に赴任してきたばかりの音楽教師の七音(桜井玲香)も加わることに。 ここからいろいろと展開があるのですが、 私が思うに前半と後半では趣が異なります。 前半は、古い昭和、まさしくカミナリ親父を題材にした過去と現在の対比があるのに、 後半は前述している「60年代の音楽」がかなり出てきます。 そもそもなぜ「60年代の音楽」が出てくるのかと言えば、 過去に亡くなった人の人造人間である「Mr.カミナリ」またはワイフたちがその年齢。 彼らの琴線に響くものがあり、敵であるワイフも政府の命令を無視してしまうほど。 それゆえの「60年代の音楽」 2年ぶりに観たせいか、物語の内容よりも、 SET本公演メンバーの年齢も気になります。 前々から言われていることだけれど、上が詰まっていて、中堅が不在で、新人。 正直、バランスは悪いと思う。 そもそも今回、乃木坂46というアイドルグループのメンバーをゲスト出演させること。 たしかに美人だし、若い。 ただ、ここにSETの若手を起用できないところに今の現状が見え隠れしている。 自分たちで育てている若手がそこに起用できないのは寂しいところ。 話題作り、新規入会者を増やす、そもそものチケット販売促進、 意味合いがたくさんあるのはわかるのですが、率直に私は寂しいな、と思いました。 大物俳優のゲスト出演であるのならわかりますが、 この役であれば、若手を起用してほしかった。 それが、舞台を長年見ている人の本心だと思う。 若手の育て方の弊害かもしれない。 その乃木坂の人を光らせるためか、SETの女性メンバーはカミナリ・ワイフこと、 いわゆる、おばちゃん軍団として登場。 寂しいな。 まだ若いメンバーだっているし。 それがおばちゃんの格好で歌を歌うのは、舞台の役柄とわかっていながらも寂しい。 東京メッツ時代から注目していたけど、 良田麻美は安心して観られる。 ルックスもいまだに美人だし、歌唱力抜群だし、ダンスもうまいし。 ソロの場面があって、本当に良かった。 ってか、東京メッツは2003年か。時が経つのは早い。 ちなみにここだけの話、めっちゃ良い人、良田麻美。 珍しく子役も多数登場。 昭和の子供たちと、ヒップホップができる子を選抜している感じ。 演技演技しているわけではなく、素人感全開で、こちらは今回のテーマにピッタリ。 そんなに出番があるというわけではありませんが。 後半のアクション、三宅裕司 小倉久寛ともに、かなり頑張っていました。 殺陣のシーンも長かった。 小倉さんは、昔はバク転できましたが、今回は側転ということで。 おそらく舞台公演を2時間に設定しているがゆえに、 脚本も削られていたことでしょう(予測) Mr.カミナリたちが、東京から九州へ逃げる過程、 今回は桜井玲香のナレーションベースで、はしょりましたが、 それがネタなのか、本当にあったのかは誰にもわかりません。 桜井玲香の出番が異常に多いので、劇団員の出番も減らせている・・・ なんて考えるのは稚拙かな? ただ、逃亡の過程がないぶん、内容は軽くなってしまった。 ポンッといきなり下関で敵勢力と対決しますから。 謎解き、葛藤、裏切り(一番最後はありますが)、も少なめ。 もっともっと秘密、驚きが欲しかった。 三宅裕司 小倉久寛、桜井玲香の3人の個性は特色が出ていたけれど、 他のメンバーの印象は正直薄かったです。 本来であれば、地下に集まった「Mr.カミナリ」たち全員に、 過去の記憶と向き合えるシナリオがあったかも。 「Mr.カミナリ」は一度死んだ人間であり、記憶も消去されたにもかかわらず、 とある歌から過去の記憶を呼び覚まします。 「過去の記憶が無い」という時点で、予想の範囲内の出来事。 ま〜誰でもわかるような無難なお話しの流れ。 誰もが予想できる、安全なパターンを提供する王道路線ですね。 彼の過去、家族とのつながりを思い出し、 さらにカミナリ親父として叱っていた子供が今大人になって目の前に・・・ そしてエンディングへ。 三宅さんと小倉さんの掛け合い。 特にSETファンであれば、 小倉さんのどうしようもないトークを三宅さんが放置させ、何事も無かったかのようにする、 というコメディスタイル重々承知しているのだけれど、 その一連の流れがわからない乃木坂ファンの方であろう若い観客からは、 「長過ぎる」との掛け声。 SETの舞台を観ていない新規客なので、致し方ないことではあるだけれど、 メリット、デメリットがあるうちの、こちらはデメリットでしょうね。 SET古参客にしてみれば、我慢ができない今どきの若者、と思うことでしょう。 総括 物語のあらすじや昭和のカミナリ親父という意味合いから、 もっと頑固で、手厳しく、昭和テイスト満載なのかと思いきや、 七音(ドレミ)がメインになってしまい、全体的なバランスは崩れていたと思う。 昔のSETであれば、もっと集中して、もっと突っ込んで、 教育、子供たちの部分にメスを入れていたと思う。 安全牌が目立つ。 そこに、1960年代の音楽。 客層との兼ね合いも考えると、微妙なところ。 何か、SETの方向性が迷っているようにも思える作品でした。 (敬称略) |
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