The Girls next door

満足度
◆公演時期 2011年12月8日〜12日
◆会場 APOC シアター
◆作・演出 モスクワカヌ
◆舞台監督 上條拓也
◆音楽・歌唱指導・音楽監督 伊藤靖浩

あらすじ
海が近い、北の地方都市。
廃校が決定した女子高で、かつて起きた、事件、事故?
あの日、あの時、あの場所で。
「彼女たち」に、本当は何が起きたのか?
作家が、遺族が、魔女が語る「彼女たち」の物語。
真相か、妄想か。
女の子達の、藪の中。
(公式サイトより引用)
観劇感想
物語の流れとしては、
とある高校の卒業式で、
とある舞台を女子高生たちが演じることになる。
その内容が過去に起きた事件(事故)を元にしており、
舞台の最中、
その事件(事故)の関係者と思われる姉妹(姉か妹か不明)が登場。
舞台の中止を求める。
そこに現われたのが、この舞台の脚本を担当した先生であった。

ここからが、いろいろ複雑になります。

ミュージカル「この夜の終わりの美しい窓」
同じ演出の方の作品。

かなり難しい内容。
子供やお年寄りは、ほぼ無理として、
私でも良くわかりません。
おそらくは、観客に問いかける、投げかける舞台。
1回の観劇では、内容の把握は難しいと思います。
最低でも2回観ないと意味がわからない。

基本、ストレートプレイ。
ただ、生歌もあるし、ミュージカルっぽいところもあります。

内容がなかなか難しいのですが、
私のイメージからすると、
「櫻の園」や「熱海の捜査官」みたいな、
独特な世界。
「ふたりが亡くなって、ひとりが行方不明」なんて、
「ひぐらしのなく頃に」にも似ている。

最初から舞台にいて喋らず見守っていた少女が、
後半は物語の中に組み込まれる。
幽霊なのか、とある人物の精神的に具現化したものなのかわからない。

過去についての振り返りでは、
当初は他の人物が演じていた役を、
先生や、その姉妹が入れ代わって演じて2役になったりする。
さらには性格付けも変わる。
意味合いとしては、映画「羅生門」のように、
過去についてのエピソードが、話す人によって異なる。
それを少しずつ謎解きをさせる感じでしょうか?

どこまでが現実で、どこからが真実なのか。
現世の話しなのか、死後の世界の話しなのか、
それとも両方がリンクしているのか?
けっこうボンヤリした空間。

学校の卒業式の演劇に、
過去の事件の関係者と思われる花杷由美が10年経って現われる理由が、
たしかにわからない。
魔女先生こと木村絵里子が、
「なぜ今なのか?」と質問する理由もうなづける。
「忘れる」ということもテーマのひとつかもしれない。

そもそも花杷由美が常に「姉妹」という言い方をしていて、
姉なのか妹なのかもわからない。
ここが謎に絡んでくるとは思うけれど。

この街の風習もあって、願いを叶えるため、
海に灯籠?を流すという。
それが昔は人間であった。
それを実現するために生徒が実演をし、
亡くなったり行方不明になった、ということなのだろうか?

前述した「ふたりが亡くなって、ひとりが行方不明」というのは、
外人の先生が好きだった有栖川愛夢が自殺をして、
逢水薔子、三海せいらが亡くなり、
花杷亜美が行方不明ってことなのかな?
つまり、3人が有栖川愛夢を蘇らせること、という願いと、
自分たちそれぞれの願いを叶えることで、地元にある風習を実行したと・・・

そして一番最後の回想で、
あの子が帰ってくるというのは、
行方不明の彼女が戻ってくる・・・ということなのだろうか?
カラフルな海の景色でしたっけ?
あのフレーズも不思議なフレーズ。

生ピアノはありがたい。
舞台が始まる前の会場入り時間から弾いていました。
このピアノが、舞台の雰囲気をさらに際立てていました。

それにしても、
最近はテレビでも、舞台でも、
同性愛をテーマにすることが多いな〜とつくづく思う。

気になった役者は・・・
役名が変わったり、2役になったりするので、
ちょっと私はわかりづらかったです。
あくまでパンフレットにて。

木村絵里子役の梶野春菜
この人はうまい。
最初は少しおとなしめで控えめな先生。
雰囲気はテレビ東京のアナウンサー大江麻理子にも似ていて好感。
が、後半の過去回想?では、束ねた髪をおろして、
少し不良っぽく怖い雰囲気になります。
こういったガラっと変わる性格の変化はすばらしい。
とても同一人物とは思えないほど秀逸な演技でした。
この人の演技を観るだけでも価値あります。

花杷由美役の若林えり
瞳パッチリの、かわいらしい女性。
年齢はともかく、一番アイドル系な感じはしました。

花杷亜美役の横澤有紀
おそらく、花杷由美の妹だと思います。
「姉妹」という言い方ばかりで、姉なのか妹なのか表現が難しい。
じつのところ若林えりもこの役を演じるので、
ルックスが似通っていて、どちらか判断できない時もあります。
とりたてて個性づけがなく、
一番普通な子かな?

三海せいら役の大日向裕美
彼女の演技を久々に観ましたが、
ま〜うまくなりました。
「東京メッツ」時代から観ていますが、ダンス系は得意な子ですが、
ようやく演技ができてきた感じ。
舞台経験を豊富ではあるけれど、
本当の意味での演技の開花はこの舞台だと思う。
というか、この舞台は他の出演者もうまいので、
ひとり下手、ってわけにもいきませんからね。
そうとう稽古を積んできたとみる。

役柄的に、とある宗教家の娘で、
高校を卒業したら、母の決めた男性と結婚するという能天気で天然な子。
あっている・・・という言い方は変だけれど、
雰囲気バッチリ。
アタリ役といえる。
カツゼツも良くなったし、セリフ回しも良くなったし、
昔と比べたら相当うまくなっていてビックリしました。
ま〜性格付けがまた違う役だと、変わるかもしれませんが、
この役については好演と言っていい。

有栖川愛夢役の佐山花織
どちからというと明るめで、今時な子。
ただ、じつはひとりが寂しい・・・という内面をもつ。
裏表、悲しい部分がある。

逢水薔子役の神宮司晴香
メガネをしたり、しなかったりしますが、
もともとの素顔はかわいい。
生徒会長で真面目。
でも、外人の先生に変なあだ名をつけられたりと不遇。
この役も難しい演技。
ちなみに歌う場面も何度かあるのですが、
彼女の歌声が一番良く聞こえました。
歌唱力あります。

エリー役の米沢絵美
エリーということで、後半ネタバレになってきます。
他の人とリンクしたり、存在というか、位置が難しい。
最初は怖い雰囲気なのですが、
じつは・・・という展開があります。
この役は難しいですね。
役者の理解力も必要。

総括
かなり難しい内容。
2回観ないと。
出演者も台本を理解しないといけないので大変。

ただ、出演者の演技力、長ゼリフ、カツゼツの良さは、
とても評価できます。
早口なセリフもよくこなしている。

そして、梶野春菜。
私は素晴らしい女優だと思います。
小さな舞台でも、こういう発見があると嬉しい。
千差万別、小規模でもいろいろな舞台を観るのは本当に楽しい。

(敬称略)
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