アリババとモルギアナ王女 2009 観劇感想

◆公演時期   2009年3月27日(金)〜31日(火)
◆会場 銀座 みゆき館劇場
◆制作総指揮・演出・振付 郡司行雄
◆脚本 郡司行雄 杉元かおり
◆音楽 秦実
◆作詞 郡司行雄 PAORA
◆舞台美術 孫福剛久/郡司行雄
◆音響制作 篠塚忠彦
◆照明操作 大久保尚宏
◆衣装 前野敦子
◆制作 大木香枝

あらすじ
貧乏な青年アリババは、盗賊たちが奪った宝を隠しているのを偶然目撃。
隠し場所の扉を塞ぐ岩が「開けゴマ オープンセサミー」の言葉と共に開いたのだ。
その一部始終を見ていたアリババは早速隠れ家に忍び込み、
財宝とともに捕らわれていたモルギアナ王女を救い出す。

アリババは兄カシムの家でモルギアナ王女をかくまってもらおうとするが、
貧乏なはずの弟が金銀財宝を持っていることに不審に思い、は弟に尋ねる。
隠し砦のことを知ったカシムは隠し砦に忍び込んだはいいものの、
宝に夢中になって扉を開ける合言葉を忘れてしまい、
戻って来た盗賊たちに見つかりバラバラに切り刻まれて殺されてされてしまう。

アリババは、兄の死体を持ち帰り仕立て屋の老人に縫い合わせてもらい葬儀を行う。
盗賊の首領ドレンスは、もう一人の犯人を捜していた。
アリババにたどり着いた彼らは彼を殺そうとするが、
逆に聡明なモルジアナの機転で・・・
観劇感想
月組のみの観劇。
題材は言うまでもなく「アリババと40人の盗賊」
懐かしいな〜私が幼稚園の頃、世界名作童話全集で読んだことを思い出しました。
ドアに印をつける行為を二回したことや、湯だった油はいまだに記憶にあります。
子供の頃の記憶力はすごい。今はすぐ忘れるのに。

銀座みゆき館劇場という場所は初めて。
かなりの小劇場ですが、客席のどこからでも見やすいです。
有楽町駅の近くということもあり、利便性は高い。

これだけ小さな小屋ですと、照明が重要。
とても明るいし変化も楽しい。電飾もあり、かなり華やかでした。
さらにSE(音楽)の選曲が抜群!
これはさすが老舗のカンパニー!と思いました。
場面の内容にあった選曲で、舞台を盛り上げます。
しかも場面切り換えで、すぐにSEも変える。
切替の速さは見事。舞台においてのSEはほんと重要ですから。

しかもなんと、小劇場にもかかわらず二階仕様。
これは驚き。
演出にもはばが広がります。

歌を歌う場面ではハンドマイク。
これはあってもなくてもどちらでもいい。
実力ある子なら、なくても充分に聞かせられます。

流れ的には、まさに千夜一夜物語。
シヘラザードが、王子に物語を聞かせ、その物語が舞台になる手法。
「アリババ」の話しが進行しているのに、
途中途中、この二人が「続きは〜?」みたいな感じで登場するのは仕方のないところ。

本編。
とにかく一番最初に思ったことは、
この「アリババ」役は物凄く難しい役だと思いました。
私が今まで観ている舞台の役の中でもそうとう難しい役の部類。
気弱で、へなちょこで、ボケもあって、いろいろ迷うこともある軟弱者。
でも、ヒロインを救いだしたり、盗賊の金を盗んだりしてしまったりと、
ヒーロー的な一面もあります。
それを演じるのがラブリーズでも久野里沙子役を好演した麻生梨里子

う〜ん、すごく大変な印象を受けました。
男がこの役を演じても、ものすごく難しかったと思います。
それを一応美少女キャラの麻生梨里子が演じますから、さらに大変。
アリババ役を観るかぎり、美少女キャラはゼロ。
自分のイメージを消し去った演技は素晴らしい。
三枚目かつ、モジモジするキャラもひじょうに良くつかんでいる。
ラブリーズの時とはまるで別人。
演技もしっかりしているし、カツゼツもバッチリだし、
瞳の大きさもあってか、キョロキョロしてドギマギしているところも面白い。
ラブリーズの時は気づきませんでしたが、歌唱力、ものすごくありますね。
声量もバッチリ。
ダンス力もすばらしい。
彼女はバンラスとれてます。

これは致し方ありませんが、役柄的な意味合いもあることから、
主役のイメージとしてはモルギアナだと思います。
性格が災いしてか、アリババはおまけ。
観る方の感情移入としては、
どんどん行動をしていくモルギアナの方が楽しいもの。
アリババは見ていて、もどかしさを感じますから。
それだけ、この役は本当に難しい。
アリババが、意外と前半の登場シーンが少ないのも影響してるかな?

おそらく、麻生梨里子が美少女オーラを消し去ったぶん、
モルギアナ姫役の三浦恵子がものすっごく映えます。
もちろん、もともと美形ではありますが、麻生梨里子が自分を消した力も大きく、
輝きがさらに増したように思えます。
モルギアナ姫は彼女にとって、ハマリ役に近い。
ただ美しいだけでなく、才女、時に男気勝る芯の強さを持つ精神。
三浦恵子の存在感、そして演技はこれにバッチリ融合。
私も惚れそうになりました(笑)
歌唱力はまずまず。彼女はダンス系かな?なかなか印象深いダンスでした。

この舞台はテンポ、展開が早いので、観ている方にしては嬉しい。
どんどん進みますからね。変な長い間がなくていい。
ただ、サムとカシムがただ単に見つめて笑いをとるシーンは、
私には良くわかりませんでした。
笑いもあるので、わかる人にはわかるのでしょう。

ゴマ=セサミー
そして、セサミーストリート
さらにはビックバード。
そういう伏線もあります・・・・

そういえば〜ど〜でもいいのですが、ちょっと記憶の片隅にあった事実。
おそらく幼稚園の頃の記憶。
セサミーストリートのキャラクターである、アーニーとバートの床屋のコント。
バートがアーニーの経営する床屋に行くのですが、
そこで髪の毛を全部切り落とされてしまうんですよ。
で、その髪の毛が切り落とされた姿が怖いのなんの・・・
いまだにトラウマ(爆)
バートの人形で出てくるだけで怖い・・・バート恐怖症でもあります。

3人の王女がモルギアナ王女を救うために旅立つわけですが・・・
正直、必要かなと・・・・・
あえて入れるのであれば、もう少し話しをふくらませてあげないと。
なんだかよくわからないし、このままだと率直にいっていらない。

ダンスシーンはけっこうありますが、
特にバツの印をつけたダンサーのシーンが一番好き。
たまに「GANg」らしい振付が出てくるのが、わかる人にはわかります(汗)

気になった役者は・・・

マハル姫役 赤須千夏
けっこう何回か観る機会があるのですが、いつも配役に恵まれない。
もちろん、与えられた役をこなすのが女優なのでそれを頑張るしかないのですが。
ただ、彼女の実力が大きく発揮される機会が少ないんですよね〜
実力があるにもかかわらず、地の中に埋まっている感じ。
メインになったらなったで「う〜ん」という感想を書くかもしれませんが。

マハル姫役は、一番年下のお姫様ということもあり、
わがままで、おしゃまなで、ストレートに感情を出す役柄。
はしゃぐ姿は可愛らしいです。ダンスもうまいですよね。
ただまぁ〜やっぱりもったいないかな。

アサド王子役 美羽
可愛らしいルックス。瞳パッチリ。
声の張りもあって、セリフもいい。
小柄な体ながらのダンス力もすばらしい。
アンサンプルでも登場しますがよく目立ちます。

盗賊フェリ 鹿島摩耶
彼女は盗賊役の中でもかなり出番があります。
小柄な体でダンスも機敏。
演技もしっかりしていて、セリフ回しも印象深い。

盗賊ワルワート役 長尾真奈美
この子は発展途上ではあるが、面白い。
ルックスがいいし、ポニーテールも似合ってるし、ダンスもいい感じ。
演技もしっかりしているし、もうちょい声の張りがあると、なおいい。

じつのところ、この舞台のキーポイントは侍女のふたり。
侍女ナルジス 亜野佳子
特に印象深いのは、安芸けい子との会話のシーン。
実力派の安芸けい子の演技によくこたえてる。
他の子であれば、プレッシャーで押しつぶされそうになるところ。
短いシーンではあるが、亜野佳子の演技の幅を感じました。

侍女サマーダ 小川めい
彼女の演技はじつにしっかりしてる。
セリフ回しもいい。
地味な存在ではあるけれど、細かいところで要所を抑えています。
各ナンバーで登場するアンサンブルでのダンスも指先まできちんと表現しているし、
クラシックバレエ?のような爪先だちのダンスもよくやっています。

バード役 松崎玲海
じつはけっこう注目していたのですが、
この役だとなんとも言えないな〜
ダンスは観るべきところがありましたが。

バードラ/オバマ役 安芸けい子
彼女が出てきただけで、雰囲気が一変。
風格が全く違います。
舞台も締まり、緊張感走ります。
この舞台の要中の要。
彼女がいなかったら、この舞台そのものが崩れるといっていいくらい。

アリババの兄カシム、ヤン、ボナサス役 津山サトル
カシムが秘密の洞窟で盗賊の金貨、お宝を奪い、
いざ出ようとすると岩を動かす秘密の呪文を忘れてしまい、
結局、盗賊に見つかり殺されてしまいます。
この前の段階で、不安にあおられる演出があるのですが、ここの演技が素晴らしい!
私はこの舞台の中で一番感動しました。

靴屋のヤンもですか!これは驚き。
ソロのミュージカルナンバーがありますが、すばらしい歌唱力。

ドレンス、ペルシャ王役 城田和彦
かっこいいルックス。特にドレンス役は美形の盗賊でいい感じ。

総括
結局最後はモルギアナ姫が盗賊ドレンスを討とうとして、返り討ちにあいます。
そこでアリババが自暴自棄になり、神様に頼んだりするわけですが、
ふと気づくとは過去に戻っていて、
生きているモルギアナ姫とともにハッピーエンド。
ちょっとひっかかりはしますが、ま〜よしとしましょう。

再演時はいろいろ修正が加わるとは思いますが、私はけっこう楽しめました。
難しいアリババ役を麻生梨里子が何とか頑張り抜きましたし、
三浦恵子の「華」も観る者を引きつけました。

大人メンバーの実力で舞台が引き締まるので、
子役メンバーも頑張ってほしいかな。
前述しましたが、
私の中で一番印象に残ったシーンが、カシムが死ぬ間際のナンバーですから。
若い新人の登竜門的意味合いもあるので、あまり多くは要求できませんが。
まさにモルギアナ王女、三浦恵子の「華」に救われました。

(敬称略)


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