公演時期 | 2000年7月~9月 16都市 29回公演 |
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会場 | アートスフィア・他 |
企画・監修 | 小椋佳 |
演出 | 小川 美也子・宮崎渥巳 |
振付 | 宮崎渥巳 |
脚本・作詞 | 高橋亜子 |
音楽監督 | 甲斐正人 |
歌唱指導 | 長田明子 |
美術 | 斎木信太朗 |
照明 | 高見和義 |
衣装 | 木鋪ミヤコ |
音響 | 清水吉郎 |
舞台監督 | 岡林真央 |
あらすじ私の名は『あんず』17歳。世界で一番嫌いなのは『昔の自分』それは、彼女が10歳の時、自分のせいでお兄ちゃんが死んじゃったから・・・ お兄ちゃんとの思い出も、どうしてお兄ちゃんが死んじゃったかも、記憶にない。あるのは、ただ、自分のせいだっていうことだけ。あの頃の自分を消しちゃいたい・・・ ある日、『青い魚』という童話を見つけました。なぜだか、小さい頃に聞いたような気がして・・・なぜだかペンをとり、作者の方に手紙を出しました。返事には『僕は君を知っている・・・』と。あんずの、過去への旅が、今始まります。 観劇感想率直な感想として、近年まれに見る、すばらしい作品だったと思います。 アルゴの弱点のひとつとして、子役男子の声量の無さが、いつもつきまとっていました。舞台を見ていても、心の中で『うわっ!男子きびしいな~』というツッコミを入れたことが、何回もあります。今まで印象に残った声の出る子役男子と言えば、俵和也君ぐらいです。ちょっと間をあけて、山崎育三郎君となるでしょうか?女子がかなりうまいこともあり、男子の非力さが目立っていました。 しかし、今回男子は、やってくれました。翔太役の大山真志君、内藤大希君、二人とも、とても素晴らしい声量ですね。内藤大希君は、4歳あんずを思いやるお兄さん役として、とても優しい歌い方だったと思います。 ミュージカルナンバーの『冬の太陽』での、あんず役の駒澤樹ちゃんとのかけあいは、見ているこちらが暖かな気持ちになれるそんなナンバーでした。真弓役の真織さんと哲也役の津田さんもこのナンバーを歌っているのですが、印象として、そして視覚として、ど~しても駒澤樹ちゃん、内藤大希君を見ちゃいますね。 大山真志君は、10歳になったあんずのお兄ちゃんですので、内藤君の時よりも兄としての自覚を持った強いお兄ちゃんを感じました。あんずが駄々をこねるのを、いさめるお兄ちゃん。強く言いたいけれど、あんず対して優しい気持ちがあるために出せない。そんな、やるせなさをうまく表現していました。 ミュージカルナンバー『伝えたい想い~あんず』は、あんずとの突然の別れがおとずれる、すぐ前のシーンです。それを知るよしもない、兄、翔太のせつなそうな歌声。『あんず、あんず、あんず、僕の宝物・・・』とあんずの名前を繰り返すシーンは今でも心に残っています。 主役の17歳あんず役の桂亜沙美やっばり演技はしっかりしていますね。アルゴ4年連続出場は伊達ではないです。正直、前回の『フラワー』や『ロボ・笑ったね』の亜沙美ちゃんのイメージはまったくなく、僕としての印象は薄いものでした。ですから、今回の演技や歌、ダンスを見て本当にビックリしました。 個人的に好きなシーンは、ミュージカルナンバーの『星の夜のサバト』です。周子役の澤田祥子さんと遥香役の江口舞さんの三人のダンスと素敵なハーモニーの歌声は秀逸です!ここでの、何かを悟ったような亜沙美ちゃんの表情はすてきですね~ それと、少女時代の自分を見つめるシーンで、『こんなことがあったんだな~』と、自分で自分にうなずく表情もすてきでした。すごい微妙な表情ですけど、細かいところを本当にうまいく表現していました。 ミュージカル・ナンバー『すごい!』と思ったのは、『たっからもの、グハッ!』です!なんといっても擬音として『グハッ!』というのを入れたのがすごい!ふつう言わないですよ、日常の会話として『グハッ!』なんて!でも、それを入れてしまう・・・しかも、その表現がとてもいいんですよね~!この『グハッ!』は、ほんとにハマリました。擬音の勝利ですね。 気になった役者郡司あやのセーラームーン等で高い評価を得ていたようなので、すっごく楽しみにしていたのですが、僕的には可も不可もないって感じでした。ダンスも演技も歌も、まあまあ。バランスが良いと言えばそうなんだろうけど、印象的なものが僕には感じ取ることができませんでした。次回の成長に期待します。 清水彩花前回の『フラワー』では、主役のメズーラを演じていました。その時はダブルキャストの中村桃花さんの印象がとても強く、彩花ちゃんもうまかったとは思うのですが、先行的なイメージが残ってしまい、彼女の印象は薄くなってしまいました。 しかし、今回の彩花ちゃんはスゴイ!前回も歌がうまいことは知っていましたが、ここまで成長するとは思っていませんでした。心に響く、優しく澄み、そして透き通るような歌声。観客の誰もが、その歌声に酔いしれました。 ダンスシーンの明るい笑顔は、とても印象深いものでした。これからも彼女には大注目ですね。 船越真美子彼女は毎年、綺麗になっていきますね~今回はマイクを忘れたりした時もありましたが、舞台度胸で、何事もなかったかのようにふるまっていました。さすがです! ピックアップ鳥井潤子ちゃんと本田有花ちゃんの、おじいさんおばあさんの役も、とっても良かった!二人の年齢で、これだけの演技をされると、他の人も困りますよね~ 総括舞台中央では過去のシーンを、そしてそのわきでは、過去の自分を見つめる現在の自分がいるため、観客の視点は,中央にありながら、舞台のわきにも移動することになります。途中途中、現在のあんず(桂亜沙美)の表情を見たいため、視線を動かすのがたいへんでした。ビデオでも、演出のカット割や編集は苦労したことと思います。 いわゆる『お涙ちょうだい』という舞台ではあるけど、そこへ至るまでの経過が、とてもすてきでした。あんずとお兄ちゃんとの関係が暖かいものであるため、途中の『青い魚』の話や『魔法のガラス玉』の話も、それほど違和感は感じられません。 それだけ、二人の絆が強かったのかな?まぁ、その分、真弓さんと哲也君の印象が僕の中では薄くなってしまったけど。 ビデオで繰り返し何度も見てみたい、そういう気持ちをかき立てられます。自分が優しい気持ちになれる舞台、それが『あんず』でした。 ※敬称略 |