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劇団ミュOP.4 Musical「Jeanne d’Arc -ジャンヌ・ダルク-」観劇感想

満足度星星星星空星
公演時期 2025/10/2→13
会場 ウッディシアター中目黒
作・作詞・演出 岡本貴也
音楽 鎌田雅人
振付 富田彩
アクション監督 奥住英明
歌唱指導 久野友莉
美術 照井旅詩
照明 岡田潤之
衣裳 上杉麻美
プロデューサー 瀬尾タクヤ

あらすじ

ジャンヌ・ダルクは火刑となった。だがフランス王・シャルル七世は、異端裁判のやり直しを命じた。なぜ、王はジャンヌの復権を望んだのか。
王とジャンヌの間に、なにがあったのか。

感想

劇団ミュとは

「日本発のミュージカルを、世界へ!」マイクやスピーカーを一切使わない生の歌と生楽器でミュージカルをお届け。

ということで、マイク、スピーカー無しの舞台でも圧倒的な歌声でした。そして生演奏が抜群に効いている。演奏の植村カンナ(pf)黒岩玲音(perc) 全公演出演。ここはめちゃくちゃ評価していいでしょ?。私は凄く良かった。この演奏があるとないとでは全然違うもの。さらにはウッディシアター中目黒は小さな箱で舞台との距離が物凄く近い。迫力満点。そしてキャスト陣が素晴らしく、チケット代が高いことも至極うなずけます。最後に照明も素晴らしい。こんな小さな劇場なのに効果的な演出。これはこの劇場そのものの照明なのか、新たに設置したものなのか。定かではないが、前に観たプペルに負けず劣らず、素晴らしい照明効果でした。生演奏と照明が効きに効きまくりました。

公演前の雑談

ちなみに、今は花を送るよりも寄せ書きのような応援メッセージ主流のようですね。これは初めて知りました。撤去する費用等いろいろなことがあるのだと思います。と思いながらこの劇場の前に花屋があることを考えると複雑ではある。

本編(ランス)

ランスチームのみの観劇。ミュージカルメイン。ミュージカルナンバーがたくさんあって私はとても楽しかった。たぶん、ほぼ全員各キャラ事にミュージカルナンバーがあったと思う。悲しい出来事の舞台だけれど、明るいミュージカルナンバーもあって楽しい。

物語の流れとしては、すでにジャンヌが亡き後、シャルル七世が異端裁判のやり直しを命じ、その裁判の各々発言により、過去のジャンヌの活躍が舞台上で繰り広げられる感じである。ここの裁判所のシーンから場面転換で過去のシーンへ何回か切り替わります。時系列も変わっていることから、やや変化に戸惑うこともあるかな?

舞台において架空の人物ではなく、歴史上の人物を演じることはとても難しいと思う。マンガ「ガラスの仮面」でも、実在したヘレン・ケラーを演じることに対し、金谷英美がその人物象に対して入念にリサーチしていたものの、オーディションでは姫川亜弓、北島マヤに敗れてしまった。それだけリアルに依存しすぎても難しいということだ。ある意味舞台は夢の世界。リアルと虚構の狭間、そして自分独自に解釈した人物が投影されるのではないだろうか?

ジャンヌ・ダルクは19歳で火刑に処された。その年齢と同い年ぐらいの女優が笠井日向と川嵜心蘭 。これは明らかに制作者側の意図があると思う。この年齢の子が時代を動かした後に迎える結末。その過程を舞台で表現をし、観客に影響を与えたかったのだと思う。

現代における「環境活動家グレタ・トゥンベリ」

これを良い意味でとらえるのか、悪い意味でとられるのかは人それぞれだが、自分の信念に基づいてやっていることは彼女と似ているな~と思いました。止まらない、眼光の鋭さ、狂気にも似た信念と行動力。あくまで私の印象は彼女に近い。

かたや戦場のアイドル

これも私のジャンヌ・ダルク象なのだが、彼女は戦場においてアイドルだったのかもしれない。戦場という生死をかけた狂気じみた世界において、聖女とも言えるジャンヌのために戦う。神に召された彼女の指示に従っていけば、彼女を守っていけば勝利する、そう思って、いつも以上に力を発揮できた(脳内麻薬であるドーパミンも発生したであろう)

気になった役者は

ジャンヌ・ダルク役 笠井日向

彼女はミュージカル「えんとつ町のプペル」で少年、ルビッチ役を演じていました。少年役だったため、私としては物足りなさを感じ別の形でもう一度観たいな~と思っていたところ、別の舞台の出演が決まっており、しかも彼女のイメージに近い活発な少女役、ジャンヌ・ダルクということでとても楽しみにしていました。もちろん、役者であるからにはあらゆる役が求められるとは思うけれど、本人のイメージに近い役柄の方が受け入れやすいな~というのは正直なところ。

とにかくまずはショートカットが似合う。抜群に似合う。よく肖像画や映画の女優のイメージがあるけれど、それに近い感じ。単純に言葉でのショートカットの髪形とは言うけれどジャンヌ・ダルクに寄り添った髪形かな?そこが凄くいい。そして彼女のもうひとつの魅力は瞳、そして視線。舞台でも表現されているが、ある意味このジャンヌ・ダルクという少女は思考が一方向に向いている。客観的に大局に物事を俯瞰することができないタイプだ。その思考と瞳、そして視線が笠井日向ジャンヌに備わっていた。狂気とも言えるその瞳。誰よりも真っ直ぐで至高の視線だった。そりゃシャルル七世も動揺するのはわかる。最初は眼光に勇気をもらっていたが、毎回毎回続くと不安感が増し、恐怖さえ感じていたもの。

ジャンヌが若い時に、とある「きっかけ」で神の啓示を受けることになった。歴史上としては具体的な理由は明かされていないが、舞台としてはある仮説のひとつとして表現されていた。この「きっかけ」の部分、私はとても重要な場面のように思える。舞台「奇蹟の人」で言えば、ヘレン・ケラーが初めて「物」に対して名前があることを理解する「ウォーター」という言葉の発現。それと近いイメージがジャンヌでは神の啓示を受ける瞬間だ。ここの笠井日向はとても素晴らしい。全てが理解できた。道が開けた。希望が見えた。迷いが吹っ切れた。達観する瞬間だ。とても清々しい表情をする。

ついにジャンヌは捕らわれ、暴行され、さらには翌日に火刑に処されることを伝えられる。 絶望の瞬間だ。この嘆き苦しむミュージカルナンバーは観客も悲痛で心苦しい。この歌声の表現、笠井日向は素晴らしい。希望もない、未来もない。神様どうして?そう訴える笠井日向の19歳のはかなげな表情。この場面で心を揺さぶらない観客がいるだろうか?演技と歌の融合であるミュージカルナンバーがじつに効果的であること、この場面で改めて思い知らされました。ここは本当に凄い。

感情移入して歌う歌い方が笠井日向。プペルの時は少年の雰囲気を醸したまま歌うけれど、今回はジャンヌという少女。少年の時の歌い方とはまた別物。やっぱり実際の年齢に近い少女の歌い方の方が私はグッとくる。シャルル七世を鼓舞するミュージカルナンバーも良かった。

ジャンヌ・ダルクは火刑に処される。数々処刑はあるけれど、火刑は相当きつい刑罰のひとつだと思う。何より死ぬまでの行程、時間が長い。燃えている最中、激しい火傷による外傷性ショック死、あるいは一酸化炭素中毒死になるのか。ただ一酸化炭素中毒は屋外だと緩和されてしまう。長時間での苦しみがあるため、死刑執行人があえてナイフで心臓をひと刺しにしたり、賄賂をもらって殺してもらうことすらある。最後の絶叫は至極素直な18歳がそこにいた。あの場面だけは着飾ること、演技することもない。本能の絶叫だった。

ジャンヌ・ダルクはダブルトキャストで、もうひとつのチームでは川嵜心蘭が演じている。残念ながら公式に観劇することはできなかったが、YouTubeの動画で少し拝見することができた。思ったことは笠井日向とは真逆の思考。静と動だ。川嵜心蘭の場合は静かに振る舞い、説き伏せるかのようなたたずまい。代わって笠井日向は陽で覇気、みんなを引っ張るスポーツチームのリーダー。ジャンヌ・ダルクの解釈が違って面白い。

今回、他のキャストにも笠井日向の特異さが伝わったと思う。舞台関係者にも、もちろん映画やドラマスタッフにもこの笠井日向という役者の希有な実力を見極めてほしい。。一度使ってみればわかる、彼女の実力が。人を引き寄せるものがある。まだ18歳。とんでもない役者であることが、舞台好きであれはすぐに気づく。この子とんでもないぞ、と。彼女に関わればその才能に気づく。

シャルル七世役 東山光明

表の主役がジャンヌ・ダルクだとすれば、裏の主役はシャルル七世。いや、もしかしたら逆かもしれない。最初から主役はシャルル七世なのかもしれない。今回ランスチームしか観られなかったが、東山光明のシャルル七世は悲壮感あふれるドギマギした表情がとても奥深かったです。観客はシャルル七世の表情、仕種、一挙手一投足をずっと観ている。なぜ捕らわれていたジャンヌに何もしなかったのか。そんな疑問を観客は視線としてぶつける。シャルル七世自身にもわからなくなってくる。そもそも自分は本当に王の血筋の者なのか?そうでないことに疑問を持ちつつ、かたや神の啓示を受けたというジャンヌが現れ、自分を支持するという。彼女は本気で言っているのか?自分を笑い者にするために言っているのか?ジャンヌの存在が重要に、そして愛しく思える時もあれば、逆にその神の啓示がうっとうしく感じる時もある。そんな大混乱な精神状態を演じる東山光明シャルル七世。不安定なままの国王は観ていてイライラしましたが、それを観客に感じとってもらえたことが大成功だったのだと思います。とても難しい役でした。

他の方もみなさんプロなので、言うことありません。
気になった方だけ少し。

ジャン・ボーペール(律修司祭、被告) 神澤直也。シャルル七世を追及しているところは凄く良かった。自分に酔って、ある意味演技演技している様が逆にいい。意外と眼光も鋭い。私は強く印象に残りました。

ヨダンド・ダラゴン役の加島茜は出てきた瞬間に美人なオーラが全開。綺麗だな~と率直に思いました。無論それだけでなく、表情豊かで観ていて楽しい。ミュージカルナンバーも楽しい!しかもそれに加えてダンスもいい!細かいダンスもじつに切れがある。

マリー・ダンジュー(仏王妃)役の平野真友。じつはジャンヌに対抗意識を燃やして!なんて裏の展開を想像していたのですが、そうはいきませんでした。ふわっと、おっとり、のんびりな王妃で地味だけど私はそこが好き。

イザベル・ロメ(ジャンヌ母) 役の田宮華苗。ジャンヌが初期に暴行され、娘を抱きしめながらなぐさめるミュージカルナンバーは心にくるものがありました。ただ、母親も天啓を受けた後のジャンヌの変わりようは、どう感じたのだろうか?「さすが私の娘!」みたいな好意的な解釈でした。私みたいな変人な性格であれば、娘の性格の変わりように不安がたちこめますけどね。宗教的なイメージとしては、好意的に受け止めるのがスジなのでしょう。

ジャン・プレアル、ピエール・コーション (司教)役、KENTARO。レミゼを観た時、テナルディエ役がKENTAROさんでした。当時のイメージで申し訳ないのですが、めちゃくちゃ素晴らしかった思い出があります。あくまで私のイメージしていたテナルディエにピッタリでした。今回、特に司教役が怖かったです。顔が怖い、怒鳴るから怖い、というのではなく、静かに淡々と説教をする姿が怖かったです。

総括

小さな小屋でありながら、マイクをいっさい使わない、生声と生歌、生楽器。素晴らしかったです。舞台との距離が近いのでより身近に感じ、迫力満点でした。ミュージカル観劇としては、正直ぜいたくともいえる。ジャンヌ・ダルクとほぼ同じ18、19歳という年齢で演じた笠井日向、苦悩するシャルル七世役の東山光明とのからみは胸にくるものがありました。歴史物、そして悲劇的な結末、観客の胸に響かないわけがない。素敵な作品でした。

そうそう「チ。-地球の運動について-」「えんとつ町のプペル」そして今回の「ジャンヌ・ダルク」異端審問官という言葉が自分の耳にこんなにも飛び交うことは珍しい。

※敬称略

キャスト表