「神様と過ごした10日間」

満足度
公演時期 2013年4月4日〜7日
会場 ラゾーナ川崎プラザソル
作・演出 ヒロセヤスタカ
音楽 秋山浩司
デザイン統括 北乃友利
振付 Tomomi/中村伽奈美
音響 井上恵介
舞台監督 渡邉歩
主催 株式会社ヒロセプロジェクト

あらすじ
「みんなを幸せにするためにやって来ました!」
ある日、大きなカバンを抱えて街にやってきた不思議な少女・サミカ。

そして、時を同じくして街に現れた謎の少女・初音。
「あたしね、草太に会うためにこの街に帰ってきたんだよ」

サミカと初音の巻き起こす騒動に巻き込まれていく、
読書好きの高校生・草太とその仲間たち。

ダンス部や生徒会、オカルト研も巻き込んで、
やがてお話は意外な方向へと向かっていく。

(パンフレットより引用)
観劇感想
Bチームのみの感想。

ヒロセプロジェクトの舞台は過去に何度か観ています。
あくまで私の印象だけれど、今までのヒロセの舞台と比べると、
ひじょうにテンポがいい。
今までは、暗転のタイミングやら、照明のタイミングやら、
ちょっと気になる部分があったのですか、
今回の舞台を観る限り、格段に良くなっていました。

物語の内容は、タイトル名やあらすじだけでもわかります。
そうじゃないかな〜?と思った、そのままの感じ。
その流れがメインではあるけれど、
いろいろと他の流れもあります。
あらすじ的には、

河原で小説を読んでいた新堂草太の元に、
突然、サミカという少女が現われる。
→時同じくして高校生の水野初音も。
→密かに草太に思いを寄せる柏木茜は、
草太と初音が仲良くしていることに気が気でない。
→そんな中、カツサンド争奪戦が勃発。
→生徒会、ダンス部、オカルト研が争う。
→オカルト研が争奪戦を制するが、カツサンドはハムカツサンド。
至高はヒレカツサンドということをサミカから知らされる。
→その目標の為、各部が一体となって、
とあるダンスの大会に出場することとなる。


こんな流れ。

ダンス部の部長、副部長のくだりとか、
オカルト研のところや、生徒会のところ。
それはいいとしても、生徒会長の美山艶姫と、神無月凛のくだり、
ここは正直いらないと思う。
全面カットでも、進行に全く問題ないもの。

水野初音が舞台脇で小説を読んでいる時、
舞台上では、今起きている物語そのものが、
過去のモノローグのようにセリフ無しで繰り広げられる。
普通、そこは舞台で表現するべきところだと思います。
ここを飛ばしてはダメ。
公演時間の制約等もあって、
削らなくてはいけないのかもしれませんが。

最後のエンディングの演出。
あそこはまるで「劇団キャラメルボックス」のような幻想的な雪。
ここは物凄く良かった。
おそらく、このエンディングは最初に決まっていて、
そこにたどり着くために伏線をいろいろ作っていった感もある。
エンディングありきかな?

気になった役者は・・・

基本、この舞台はダンス系の子が多く、
中には歌唱力がある子もいる。
ライブに出ている子も多いようですね。
出演者が多いので、全員なかなか把握できなくて申し訳ない。

水野初音役の近藤亜紀
彼女は子役から観ていますが、見た目は昔とほとんど変わりません。
でもベテラン。
大学生ですから。
知らない人にしてみれば、高校生でも余裕で通じる。
良い意味で童顔。
水野初音という役は、どちらかというと普通の女の子。
けっこうスッと演じられた気がします。
もちろん、いろいろな思いを押し殺しての、涙を流さずに笑顔。
役自体がそれほど主役主役していないので、
サラッとした印象ではある。

サミカ役、五十嵐彩伽
正直、一番印象に残ったのは彼女。
「真夏の夜の夢」の」妖精パックと同じように、この舞台の肝。
ハキハキして、可愛らしくて、ドジッ子の部分もあって、
何か憎めない、愛くるしい少女。
少なくともこの役に関しては、雰囲気バッチリ。
声も良くでているし、
セリフ的にも、特に気になることもないほど。
「です」口調もじつに心地いい。
何より驚くのはこんな大役なのに落ち着いた舞台度胸。
ドギマギしないところがいい。
歌はこれからだけれど、嫌な歌い方ではないし、
サミカなら、こんな歌い方もアリかなと思える。
飛んだ秘密兵器がいたものだ。
今後、注目する女優になるかもしれない。
となると、Aチームであった小林萌夏のサミカも観たかった。

柏木茜役、今久保汐音
性格的に、元気いっぱい、サッパリしている部分もありつつ、
妄想癖もあって激しく落ち込むこともある。
裏表、内面が激しく対比する。
演技的にはまだまだこれからだけれど、
私は好きだな。
彼女には惹かれるものがある。
茨木亜由美、今泉舞のような感じ。
ただ、正直セリフ回しは早い。
言葉が先行して重みが無い部分も。
これはこれからの課題。
歌も歌っていましたが、歌唱力もありますね。

古屋羽月役の越中亜希
ダンス部副部長として、部長と対立したりする役柄。
おでこ全開だけれど、なかなか可愛いルックス。
演技よりも、その後の歌やダンスのパフォーマンスの印象が強い。

新堂草太役の渡邉康輝
初舞台ってパンフレットには書いてありますが、本当に?
だとしたら凄い。
あの、なんともいえない、
ちょっとヌボッ〜として、やる気無さそうにしながら、
好きな小説のことに関しては熱く語る演技。
ここは印象に残りました。
アニメの「氷果」の主人公のような雰囲気。
雰囲気的にはバッチリ。

小柳さつき役の吉田ゆいも初舞台のようですが、
とてもそうは思えないほど、先生役は無難にこなしていました。
優しい雰囲気があるし、美人ですし、スタイルもいい。
小川真奈っぽいルックスが印象に残っています。

美山艶姫役の荒屋知子
彼女はうまいでしょ。
年齢もいっていることから、高校生役はギリギリOK。
彼女が一本筋が通ってしっかりしているから、
生徒会部分も安心して観られます。

あとはルックス的に三好夢が印象に残りました。
パンフレットの髪形と違い、舞台の方がいい感じ。

蛇足ながら、大場啓博は何か凄い。
自分の出演組で無いときに、
客席を駆け回ってパンフレットを配っているのだけれど、
ここでの発声がいい。
さらには、ひとりひとり吟味をして、
「誰を観に来たのですか?こういったものがありますよ」
と、凄く積極的に物販営業をする。
言葉遣いがしっかりしていて、丁寧で、現時点で物凄く素直。
これは両親の教育の賜物か、はたまた事務所的なものなのか、
本人の資質か、ふと考えてしまいました。
私が同い年であれば、絶対にあんなに積極的にできませんから。
せっかくだから彼の演技も観てみたかったのですけど、
違う組で残念。

総括
ひとつの大きな流れがありつつ、
そこへ向かうまでの伏線がいろいろとありすぎ。
あまり四方八方に飛ばす必要は無かったように思えます。
水野初音、柏木茜、渡邉康輝、
この3人の三角関係?をもっと脹らませてもいい。
観客が観たいのはそこだと思う。

物語の視点が、サミカ、水野初音、柏木茜、新堂草太、
ダンス部、生徒会、オカルト研、生徒会長と神無月凛、
いろいろありすぎて私の思考が追いつきませんでした。
舞台の進行も早めですし。
個々の役者のセリフ量、出番、公演時間等、
いろいろ制約があるのはわかりますけど。

(敬称略)
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