舞台「イタズラなKiss」

◆公演時期   2008年11月27日〜12月7日
◆会場 新宿シアターサンモール
◆原作 多田かおる
◆脚本・演出 坪田塁
◆脚本協力・演出助手 原亜紀子
◆音楽 楠瀬拓哉
◆振付 森新吾

あらすじ
偏差値順のクラス分けで最下位F組の相原琴子は、
学年一の天才A組の入江直樹に入学式で一目惚れ。
ラブレターを託すが速攻で振られ撃沈。
ある日、琴子の新築の自宅が地震で崩壊。
父の親友の家に住むこととなるが、なんとそこは直樹の家・・・
(パンフレットより一部抜粋)
観劇感想
少女マンガ原作の舞台。
私は全く原作を知りませんので、舞台が初めてという形になります。
なぜ同じ高校でそんなに偏差値に差があるのか・・・という戯れ言はともかく(汗)
少女マンガ的な雰囲気なので、男性の思考とはやや違うかもしれません。

新宿シアターサンモールということで、非常に観やすい舞台。
特に今回は教室シーンが主で舞台後方が廊下になるため、
役者が前面に出てきており、後ろの席でもバッチリでした。

女性客がほぼ95%
これはすごい集客力。
当然のことながら満席で、簡易的な椅子もありました。
追加席ができたのでしょうね。

基本は学園ラブコメディ。
途中、歌やダンスが入ります。

いきなりのオープニング登場は、加藤良輔のラップ。
マンガのあらすじをラップで歌いあげます。
歌はうまいのですが、言っている意味はよくわからずじまい(汗)
「これだけだとよくわからないな〜」と思ったのですが、
長めに歌ったあとに、よ〜やくキャストと歌のコラボが成立しました。
キャストが入れ代わり立ち代わり現れて、説明する感じです。
一応キャストの声もあるのですが、この時は生音ではありません。
ミュージカルであれば、出演者の個性を出すナンバーになるのは至極当然ですが。

面白い演出としては、ひとつのシーンが暗幕になるたびに、マンガが上映されます。
ただマンガのスライドショーが流れるだけでなく、そのマンガが微妙に動きます。
体が揺れたり、擬音が揺れたり、吹き出しが動いたり、今風な感じですね。

今回、意外とSEが少なめなのは驚き。
もっとあるかな〜と思いました。
演劇主体だったのでしょうか?

安倍麻美仲村瑠璃亜 黒木マリナの3人ユニットでの歌うナンバーがあるのですが、
ここに仲良し4人組である水野夏美の姿がない・・・
これは残念。
歌が下手なわけありませんし。
4人だと安倍がセンターになれないためなのか、事務所の問題なのかわかりませんが、
ここは4人で歌ってほしかった。

物語の最後の方、入江直樹役の八神蓮と西園寺拓海役の颯太のふたりが、
大人たちに訴えるところがあるのですが、長いシーンにもかかわず、音楽はいっさい無し。
二人の演技、セリフをじっくり聞いてほしい・・・という演出なのでしょう。
う〜ん、ただ、正直パワーが足りない。
もっと演技ができる人であれば、その言葉で観客を引きつけることができると思いますが、
このふたりは舞台役者としては発展途上でしょう。
ちょっと間延びした感じです。
音楽をいれた方が良かったかも。

気になった役者は・・・

やはり一番は主役、相原琴子役の安倍麻美
ま〜いろいろあったようですが、
舞台女優として、私的には高評価。
明るく元気いっぱいの役で、演技的にやりやすいことはやりやすいです。
発声もしっかりしているし、セリフも聞き取りやすい。
表情付けもコロコロ変わって楽しいし、演技もすごくやっている。

体調が悪い、というシーンで突然舞台上で倒れるシーンがあるのですが、
ここの倒れ方もひじょうにうまかったです。
ここは相当練習した気がします。
見直した(爆)

仲村瑠璃亜、黒木マリナとともに3人ユニットで歌う場面もありますが、
なかなか歌唱力もあります。
ただ、ソロのところはいいのてすが、おそらく3人の時は高音パートですよね?
そこはちょっとつらい気がします。違う人かな?

あえてひとつツッコムのであれば、初日でかなりパワー全開の雰囲気があるので、
これをずっと持続できるかな〜?というところ。
ぜひとも頑張ってほしいです。
ひと皮むけました。

入江直樹役の八神蓮はクールな役なので、セリフが少ないのは残念。
というか、登場するのが中盤あたり。いくらなんでも遅すぎる。
ミュージカル「テニスの王子様」に出演していたようですが、声質的には舞台の発声ではない。
クールな性格の役のせいもあるとは思いますが、覇気がないのはつらい。
クールな役ならクールな役で、けれんみのない演技、スマートさがほしいところ。

西園寺拓海役の颯太は穏やかな役。
なるほど、彼が赤西仁の弟なわけですね。
おそらく、これから多少は「弟」というくくりで呼ばれてしまいますが、
それを払拭するためにも、本人の努力が必要でしょう。

彼も中盤からやっと登場。ただ、役者としてはこれからでしょうね。
舞台の発声としてはまだまだ。ボソボソとした喋り方ですから。
私が観劇したのが初日ということもありますが、
後半の長セリフも、なんとか覚えているだけという感じ。
ここを舞台公演中に成長してほしい。

小森じん子役の仲村瑠璃亜は子役時代からのベテランなので言うことないです。
役柄的にも今風の女子高生役で、そのまんまな感じ(笑)
顔だちも昔から全く変わらない。
演技も発声もバッチリですし、ダンスもさすが。

石川理美役の黒木マリナは、今回は珍しくクールな役。
メインキャストでありながら、どちらかというと今回は控えめで落ち着いた役。
演技もダンスも、言うことないですよ、完全にプロですし。
というか、ほとんどずっと他の舞台に立て続けに出演。
この舞台の前後にも舞台がありますし、
その中での役作りやダンスは本当に大変だったことと思います。
それを、ものともしないのはすごい。

藤堂志保美役、三田村春奈の話の流れから「セーラームーン」のポーズの話しになるのですが、
ここで黒木マリナからツッコミ(笑)
ポーズまではしませんでしたが、ここは私自身クスッと笑ってしまいました。
知っている人は知っていますが、今回の客層では知っている人がいるかな〜?

久々の宍戸愛役の水野夏美
アルゴ(ユー・ガット・ア・フレンド誰もがリーダー誰もがスター)を黒歴史化していますが(汗)
やっぱり抜群にうまいです。
ルックスはアルゴ時代よりもさらに可愛くなっています。
相当人気があるでしょうね。
演技は前からうまかったのですが、
今回はダンスの実力に驚き。
特に一番最後のソロのダンスシーンは素晴らしい。

一ノ瀬亘役の小野賢章はセリフが膨大・・・
おそらく、演技がしっかりできる人が三枚目的、話の流れを作る役柄なのでしょう。
今回の役は見た目は男ですが、じつは入江直樹が好きという、同性が好きな役。
かなり難しかったことと思います。
ですが、喋りもしっかりしているし、演技力も文句ないです。
この舞台のキーポイント。

池沢金之助役の鷲尾昇も小野賢章同様にこの舞台の要。
彼の発声は完全に舞台系。ひじょうにうまい。
三枚目の役柄は抜群で、他の役者に対するツッコミの仕方もすばらしい。
コメディとしては、彼が流れを作っています。

そして、さらに印象的なのが里中大悟役の加藤良輔
彼はラップもできるし、演技もいいし、発声もバッチリ。
特に発声かな?
ハキハキしていて、じつに耳に心地良いセリフ遣い。
舞台歴を見るとかなり出演していることもあり、やはりその下地があるのでしょうね。
かなりいいです。今後の活躍にも注目したい役者。

白石純役の寺田ちひろはなかなかやります!
クイズ同好会ということもあり、何でも手首に巻き付けたボタンを早押しで押して発言(笑)
設定がかなり面白いです。
メインキャスト以外の女の子では、彼女がかなり目立ちました。
ルックスもかわいいし、発声がしっかりしているし、演技力もあるし、存在感も抜群。
彼女は舞台系で今後くるかもしれません。
(なるほど、事務所的にも舞台系ですね。基礎がしっかりしているはずだ。
今後プッシュしてくるでしょうね。アイドル的ルックス+実力派女優として期待できます)

藤堂志保美役の三田村春奈は濃いベタベタな演技がいい。
演劇部ということもあり、劇中劇っぽいところもすごく面白いです。
アニメ声というところもあり、これから人気が出る予感。

椎名葉月役の藤岡静香は、文芸部、そして川柳マスター。
背筋がピシッとしていて声の張りもいい。
クラシックダンスも得意なようで披露していました。
ただまぁ〜、これが普通にどこまでうまいものなのかはわかりません。
芸能界の関係に進む人は、だいたい日舞を習っていることが多いです・・・

柊璃子役の升ノゾミは占い研究同好会。
意外と出番が多いです。
演技も発声もすごくしっかりしている。
舞台歴を観ても、けっこうなベテラン。

熊井麻衣役の小林さりもよくやっています。
円周率の暗唱というのがアピールポイントですが、
夫婦漫才もいけそうな面白い雰囲気もいいですね。

岡本華子役の岡田理恵は美術部。
初舞台のようですが、おどろおどろしい独特な雰囲気は面白かったです。

小田アギレラ役の溝口真央
派手系な女子高生で、帰国子女で日本語が変・・・という役柄。
秋元麻衣との漫才コンビ、ボケ系。
人を笑わせるのは本当に難しいのですが、ここのコンビはなかなか面白かったです。
入江に対するタメ口もじつにいい。
初舞台とは思いますが、意外と発声いいですね。

錦織レオナ役の疋田英美は、現おはガール2008のメンバー
メガネをかけて生真面目な生徒会副会長役を頑張っていましたが、
初舞台ということもあってか、ただ出演したという感じ。
頑張っているのはわかりますが、セリフを間違えないように、ただ話しているだけ。
というか、本来であれば明るく元気な役の方が彼女には合っていたと思いますが、
役なので仕方ありません。今回は経験でしょうね。

瞳香奈恵役の秋元麻衣GANG等で何度もヒロインを演じている実力者。
今回は派手系の女子高生役。
もうちょい出番あると思ったのですが、そこはちょっと残念。
演技やセリフ遣いは全く問題ないです。
ダンスも披露しますが、さすがにうまい。
最後には、スポットライト下、ソロでタップも披露していました。

子役、入江裕樹役の星野亜門も、すれた感じがなかなかいい。
ふてぶてしいところや、タイミングよく愛想をふりまくところもじつに丁寧。
この子も今後出てくるかもしれない。

等々力達也役の水谷あつしは完全にプロなので言うことないです。
見た目の雰囲気で熱血先生と思いきや、けっこう三枚目的で、しかも下心ありありな感じでした。

総括
全体的に2時間10分ぐらいの舞台。
私はけっこう集中して舞台を観ることができるので大丈夫ですが、
事前に聞かされてない方は、まさか一気に2時間とは思わなかったかもしれません。
途中トイレに行く観客も観られました。
できたら事前に館内放送で休憩無しであることを、
アナウンスしておいた方が良かったかもしれません。

主役の安倍麻美がとても光った舞台。
八神蓮と颯太が後半から登場、出番が少なめということで、つらいところもありますが、
回りのベテラン舞台出身者がフォローしていますので、軽いノリで観られる舞台です。
あえてSE(音楽)を入れなかったかもしれませんが、少しは入れても良かったかも。
ミュージカル的な方が印象度は強いんですけどね。

この舞台を観て一番思ったことは、
舞台系でもルックスがよく、なおかつ演技もしっかりできる人が確実に増えているということ。
ただ演技ができればいい・・・というものでもないな〜というのが正直なところ。
私としてはつらいところなのですが、これが現実なのかも。
(敬称略)
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