公演時期 | 2008年8月22日~24日 |
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会場 | 演劇制作体V-NETアトリエ |
作 | 井保学 |
演出 | 井保三兎 |
あらすじあたしの名前は明石瞳。 お父さんと、一番上のゆかりお姉ちゃんと、二番目の美紀お姉ちゃんと、 4人で「みゆき食堂」で働いています。 ゆかりお姉ちゃんは、もっとしっかりしてほしいし、 美紀お姉ちゃんはと勝手にどこかへ行っちゃうし、 あたしがしっかりしないとな~ 常連さんに、新しいお客さん、毎日毎日忙しい~ (チラシより、一部抜粋) 感想私が観たのはBチーム。 客席が40~50席ほどの小劇場。 こういった場所は何度も見ているので、 狭さは全く感じませんでした。 慣れの問題ですね。 公演時間は1時間30分ぐらい。 劇団の舞台ですので、子役は数名でほとんど大人です。 話の流れ的には、
じつは冒頭で登場するお客が「会計いくら?」と話して、 長女のゆかりがメモを見ながらもたついている瞬間、 すぐにピンときました。 若年性アルツハイマー、または痴呆症の話しではないかと・・・ ただ、別に意味合いがわかったとしても、 そんなことはどうでもよく、 その「題材」をどう物語として膨らませるかに興味がありました。 基本はどこにでもある風景。 「みゆき食堂」中心。 どういう舞台でもそうですが、 なんの変哲もない日常の生活が題材というのは、 観客を引き込むことが本当に難しいんですよね。 記憶力に乏しい長女。 じつは過去に結婚をしていたが、この病気が理由で離婚。 しかし、その結婚すらも彼女は忘れていた。 記憶から消え、覚えていないはずなのに、 「さようなら、あなた」 と言うセリフがあるところや、 瞳が記憶が消えていくかもしれないゆかりに対し、 毎回あえて「お姉ちゃん!」と声をかけ、 ゆかりから、「な~に瞳?」という、 自分の名前がまだわかっていることに幸せを感じるという脚本は、 なかな秀逸だな~とも思いました。。 また、元旦那がやってきて「やっぱり僕には君が必要なんだ!」と言うところ。 実際問題として、ゆかりは旦那の名前も覚えておらず、 愕然として結局帰ってしまうシーンも印象的。 一番最後、ゆかりが、父親からのメモを言い寄ってくる石井に対し放つ言葉、 「早くいい人を見つけてくださいね」は笑いました。 一番今回の中で面白かったです。 他のコメディのところは、あまり笑えませんでしたが・・・ 最後の方の、ゆかりの病気の真相、旦那との関連、 ゆかりの病気を知っていても真剣に付き合おうとする石井、 毎回ゆかりにグチを話す智子に対しての怒りなど、 もう~修羅場なのですが、美紀が、 「王様の耳はロバの耳」のイマイチわけのわからない言葉を放ち、 場をしらけさせるんですよね・・・ もちろん、明らかにそういう台本なのですが、 これはいらなかった・・・別に空気が読めない美紀を出す必要はなかった。 その後にまた別件でコメディありますし。 ま~おそらくシリアスすぎて、コメディを散りばめないと場がもたないのはわかりますが。 私的には、智子が、なぜ毎回長女の部屋に入っていくかはわかりませんでした。 それが後半にわかるわけですが、なるほど~と思いました。 つまりは智子がゆかりの病気を知っていて、 わざと、不倫等のグチを毎日聞かせていたんですね。 ゆかりは優しいからそのことについて智子を慰める。 しかも1日程度で記憶は忘れてしまうので、 次の日に同じことを話しても新鮮に受け取って、再び智子を慰める。 その毎回新鮮に慰めてくれることが、智子にとっては嬉しかったのでしょうね。 そんなグチを毎回長女に聞かせていたことを知っている三女の瞳は、 智子のことが嫌いでしたが・・・ ちょっと、気になったのは「ガンダム」ネタが散りばめてありました。 時代の流れだな~と感じました。 気になった役者長女のゆかり役の吉岡奈都美一生懸命メモを見ながら思い出す演技はなかなかいいです。 真剣に悩むのではなく、 ふわふわ~とした感じで悩む姿の方が逆に真剣に感じますから。 簡単そうに見えて難しい演技。 近藤役の西川智宏博多華丸似の濃いルックス。 演技力抜群で全く申し分ない。普通にうまいです。 口数が多く、でしゃばりな3枚目役ですが、こなれた演技は抜群。 騒ぎ立てるのが好きで話の中心でいたいからこその寂しがり屋、という演技もなかなか。 話の中心ということもあり膨大なセリフですが全く問題なし。 美紀役の内田ゆか私服の派手さと、自宅にいるときのジャージ姿のギャップが面白い。 このとき、化粧も変えてるんですよね。 全く別人(爆) 女性は怖いです(汗) もちろん、それを意図しての舞台演出ですが。 意外とあっさりとした演技。 派手な時はそれでいいと思います。 すれた感じがあってますから。 派手系でチャラチャラしていて、一見何も考えてなさそうに見えて、 じつはいろいろ悩んでいるという役どころ。 自分も遺伝的にいづれは若年性アルツハイマーになるかもしれない。 その不安がある・・・という告白シーンはなかなかいいですね。 ただ、もう少し熱い切れ方が欲しかったかな。 頑張ってはいるけれど、さらに厳しさがほしい。 智子役の田村倫やや奥手でありながら、打ち解けると話しやすいタイプの役柄。 途中、セリフでちょっとなまりがあったのですが、たまたまかな? 石井役の大川内延公がゆかりに対し真剣交際を申し込むが、 父親がかたくなに断る姿もいい。 気持ちはありがたい、気持ちはありがたい、 でも絶対無理!!結果がわかるんだよ! そういう父親の姿がすごくよく表現されていました。 淡々とした父親役の和方五郎でしたが、私は意外と好きです。 三女の優希ミュージカル「アニー」2004のケイト役。 ほとんど出ずっぱりなので、セリフは他の役者なみに膨大。 というか、長女のゆかりがボケ、次女の美紀がツッコミ、 瞳が真面目系のおさえという感じですから、一番しっかりした役となるわけです。 しかも語り部役なので、進行もかねます。 かなり大変・・・ かわいらしいルックスからの、コロコロ変わる表情付けが特徴。 それに大人顔負けの演技力。 ふたりの姉がだらしないから、私がしっかりしないと! というマメな性格の三女役を好演。 彼女はいろんな役柄ができるので、演出する方も重宝されるでしょう。 セリフのカツゼツ的には、長セリフがたくさんありましたが、全く違和感ありませんでした。 発声的に、やや舌なめずりで鼻にかかるタイプではあるのですが、無問題。 やはり、練習の成果でしょう。 「あの人(智子)嫌い・・・」という、 ゆかりお姉ちゃんを心配するところはいいですね。 姉に抱きつき、大声で悲しむ姿もとても良い演技。 大泣きしたら「泣いてスッキリした!」という切替もうまいです。 総括何気ない日常生活の中に「病気」「不安」的な要素が入ります。 やはり、正直に言えば、内容として面白味には欠ける。 観客優先として楽しめる舞台をとるのか、 制作が意図する深いテーマの舞台をとるのか、難しい判断なんですけど。 出演している役者は、みなさんすばらしい演技でした。 次回再演する際は、もう少しいろいろ取り入れるといいかもしれませんね。 ※敬称略 |