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櫻の園 2007年観劇感想

満足度星星星星空星
公演時期 2007年6月24日(日)~7月1日(日) 
会場 青山円形劇場
原作 吉田秋生
脚本 じんのひろあき
構成・演出 堤泰之
美術 本江義治
照明 倉本泰史
音響 石神保
衣装 沢木祐子
企画・制作  ネルケプランニング

あらすじ

櫻華学園高校演劇部では、毎春、創立記念日にチェーホフの「櫻の園」を上演することが伝統となっていた。 上演の朝、しっかり者の演劇部部長・由布子はいきなりパーマをかけて登校してくる。 部員達は驚きを隠せなかったが、 さらに前日、部員の一人が他校の生徒とタバコを吸って補導されたというニュースが部員の間に駆け巡る。 それによって、公演は中止になりかけるのだが…。 (公式サイトより引用)

感想

公演場所が青山円形劇場なので本当に舞台と客席が近く、 後ろの席でもじゅうぶんに演者の顔の表情を確認することができます。 マイク無しなので、セリフが聞き取りやすい人とそうでない人がいます。 ここは微妙かな? やっぱり舞台なので、あえてマイク無しで取り組んだのではないかと思います。 90分の演劇でパンフレットは1500円でした。

基本はストレートプレイ。 エンターテイメント性をもつ舞台でもなく、楽しく明るい舞台でもなく、悲劇でも喜劇でもなく、 世の中をチクリと皮肉る深い舞台でもありません。 ただ単に女子高生の演劇部の活動内容が淡々と演じられます・・・ その中には恋愛あり、友情あり、同性としての特別な感情があります。

私自身はこういう舞台に慣れているので大丈夫ですが、 楽しい舞台を期待していたり、初めて舞台を観る人にしてみると、 ちょっと雰囲気が違ってつらい舞台かもしれません。 訴えかけるものがあったり、奥深く意味がある舞台というものではありませんから。 楽しくないし、心に残るものもない。 「こういうお話がありました」という演じる側の提供だけで終わります。 嫌いな人は普通にこの舞台嫌いでしょ。楽しくないもの。 リピーターも、アイドルファンであればともかく、一般の人はもう一度観たいとは思えないでしょうね。 好き嫌いが極端に別れる舞台ですから。 学園物のどこにでもありそうな話しを淡々と舞台上で演じ、それで終わりという感じ。 途中、劇中劇があるので、そこだけがほんのちょっぴり「舞台」というものを感じさせますが。 せっかくピアノとヴァイオリンは生音なのに、その音楽の余韻に触れることすら忘れてました・・・

声の発声も、舞台特有の声質ではなく、おそらく普段の喋りの延長線上のようなものだと思います。 普通の女子高生の会話。 劇中劇のところで、俗にいう、舞台的な発声をようやくおこないます。 ここはやはり舞台出身者のセリフか多かったです。 赤坂さなえや仲原舞の「アニー」組(?)、 長谷川桃、飯塚由衣、松永裕子クラスはさすがに声の発声が違います。 だからこそ、セリフも多かったのだと思います。 能登まり子も、男性的な雰囲気で声もよくとおります。 中村映里子は初舞台で仕方ありませんが、劇中劇の声は全く張りがないのは残念。

前半、微妙に伏線がはられており、何か大きく進展するのかな?と思いきや、 事件は一応起こるものの、とりたてて大きな動きになるものではありませんでした。 公演開始直後は、阿井莉沙と鯨井康介のふたりだけのシーン。 そしてキス。 これがまた長いんですよ(爆) 恋人同士なので、ずっと一緒にいたいし、長いキスは当たり前なんですけど。 私は別にどぉ~ってことはないのですが、気になる方もいたようです。 ただ・・・・・やや長かったか?(笑) キスシーンのある舞台は何度も見たことがありますが、 一番最初のシーンでのキス、かなり長め、しかもディープ。 今までみたキスシーンのある舞台に比べるとかなり違和感ありました。 正直な話、やりすぎだと思います。 舞台の頭に持ってくると、そこばかり印象に残ってしまいますので。

しかも、すごいのが鯨井康介の出番はこれでほとんど終わり(笑) あと一回タバコを取りに出てくるのですが、ほんの少しだけ。 事実上、キスして終わりという役得(爆) しかもシングルキャストなので毎回です。 こういう演出は明らかに意図的でしょう。 本人たちがいろいろ考えてこういう演出にした・・・というのは考えにくいです。 となると、なぜこういう演出をしたのか考えるわけですが、 単純に「彼氏彼女がいるといいよ」というわけではなく、 異性と同性の関係を主張したかったのかもしれません。

私は2回観劇したのですが、意外と最初から伏線が張られていたんですね。 1回だとわからないです。 佐藤寛子、中村英里子、青谷優衣の三角関係(?)の相手を見つめる微妙な視線のつけ方も、 2回目の方がわかりやすいです。1回だとそこまで気づきませんから。 ダブルキャストなので星組月組の違いを述べたいのですが、 特にそれほど変わったところはありませんでした。 メインキャストの4人はシングルですから、それほど大きな変化はありません。 微妙なセリフの違いや、かけ声ぐらいでしょうか?

気になった役者

全員の顔と名前を一致するのにすっごく苦労しました・・・ でも全て把握しました。けっこう頑張った、私。

志水由布子役の佐藤寛子

グラビアアイドルとしても有名ですし、テレビドラマ出演もしています。 ただ、私から言わせるとテレビでの出演はイマイチパッとしませんでした。 だがしかし! 彼女はじつに舞台映えしますね! 独特の間を持っているので、それをテレビではいかしきれないのでしょう。 舞台の方が彼女の魅力を十分に引き出すことでがきます。 主役だと思いますが、演技的にはすごく良かったです。 いわゆる過去のトラウマで、ちょっと男性に拒否反応があるため同性を好きになる・・・という感じの演技。 いいんじゃないでしょうか? 彼女の演技にすごく引きつけられました。

パンフレットにも書かれていますが、 一番印象的なシーンは倉田知世子と写真を取るシーン。 ここは・・・・すっごくいいですね! ふたりの間合い、それぞれの気持ち、空間、いろいろ伝わってきました。 舞台特有の声質ではありませんでしたが、声はよく通っている方だとは思います。 もちろん、まだまだ勉強の余地はありますが、私はとても好感がもてました。 これから舞台関係もどんどん続けてほしいです。

2回目 何度観てもすばらしい。彼女の表情付けや喋りは観ていて引き込まれます。 阿井莉沙との二人芝居の時、たしかに阿井莉沙は下手ではないのだけれど、 佐藤寛子の存在感が強く霞んでしまいます。 ちなみに、知り合いの某女優も絶賛してました(笑)

城丸香織役の阿井莉沙

出演シーンはかなりあります。 アイドルなのにキスシーンOKなんですね。ちょっとビックリ。 演技自体はまずまずという感じでしょうか?初舞台ではありませんから。 声に張りがないので、イマイチ聞き取りづらいところもあります。 ただ、長セリフもあるし、女子高生の揺れる演技もあるしで、かなり頑張ってました。 本人的にはこの役苦労したことと思います。難しいですよ。

2回目 前述しているとおり、下手ではないんですよね。 2回見ると、こなれた演技が良くわかるし、自然かつ丁寧な演技であることもわかります。 セリフの部分だけは、声に張りがないので小さいですが。

杉山紀子役の青谷優衣

前半はほとんど出番は無く、後半にようやく登場します。 この役もかなり難しい役。自分自身をあまり主張しない感じかな? 特に佐藤寛子と中村映里子が仲むつまじくしているのを影から見つめているところは、 すごく難しい演技でしょう。 青谷自身も佐藤のことが好きだった・・・・・という雰囲気をかもしだすところですから。 ただ派手な役ではないため、彼女自身のオーラというか存在感は主張できませんでした。 印象が薄いんですよね。これは仕方のないことですけれど。

2回目 う~ん、すべての役の中で一番特殊な役。たしかに一番難しいと思う。 2回目の方が、佐藤寛子を見つめる時の表情がいかに微妙に演技をしているのかがわかりました。 彼女を好きだからこその独特な視線。う~ん、やっぱり難しい役です。

倉田知世子役の中村英里子

いきなり失礼なことを言って申し訳ない。 パンフレットの写真はいいんですけど、実際に生で観てみるとかなり痩せている印象があります。 この痩せ方が、ちょっと年齢が高く見えてしまうんですよね。ここは残念。 初舞台ということもあり、仕方のない部分はありますが、それでも演技的にはまずまずな感じでしょうか? ただ、声に張りがない。もっとほしい感じ。 おとなしい役どころも一因だとは思いますが、ちょっとパワーが足りなかった気がします。 劇中劇のセリフはお世辞にもうまいとは言えず、かなり閉口・・・・・・ 逆に私が苦笑してしまいました。 パンフレットの本人コメントにも書かれているとおり、 佐藤寛子との写真撮影のシーンは一番印象に残りました。 はにかんだところとか、すごく素敵でした。本当に心に響きます。

久保田麻紀役の能登まり子

演技うまいですよ。パンフレットの経歴を見ると舞台も多数こなしていて、主役も多いです。 今回の役どころは、男性的でボーイッシュな雰囲気を持ち合わせる役でした。 う~ん、女子がほとんどの中でこういう役は目立ちますよね。 それだけ演技がしっかりしている人が選ばれる役どころだと思います。 印象に残らないわけがない。

同じく久保田麻紀役の長谷川桃

彼女も、こういったボーイッシュで声に張りのあるリーダー的な役は抜群にうまい。 今回、先に能登まり子の演技を観ていたのですが、 この時点で長谷川桃に適役だな~とすぐに理解できました。 舞台系出身なので声に張りがあって、通常の舞台でも、そして劇中劇でもセリフが響きます。 こういうメンバーがいないと舞台が締まりませんからね。 アイドル一辺倒のゆるさを引き締める感じ。

大野真由美役の飯塚由衣

彼女の観劇はココスマイル4以来。 その時よりもさらに良くなっていますね。 演技もしっかりしているし、なによりカツゼツが良く聞き取りやすいです。 飯塚由衣という存在感もあって、本格的な舞台女優だな~という印象。 昔から観ていると、成長の度合い、そして本人の努力の成果を見ることができるので感慨深いです。

平井和代役の市川葵

かわいい(笑) あくまで見た目の感じですが、のほほ~んとした雰囲気が印象に残りました。 発声はまだまだですが・・・

河合喜美子役の琴あやの

このメンバーの中では三枚目っぽい役の担当でしょうか? 独特な雰囲気をもっている女の子で、コメディチックな演技も良かったです。

中野敦子役の仲原舞

言うまでもなく、2003年「アニー」の主役。 久々に観ましたが大きくなりましたね。当たり前ですが。 髪形がショート・・・というかセミロングかな?なかなか似合います。 普通に女子高生という感じで、子供っぽくは見えませんでした。 声の発声は、ハッキリ言ってこのメンバーの中で一番じゃないかな? とにかく聞き取りやすい。 劇中劇の部分でも、すごく声がとおります。 そんなこともあってか、セリフも多いです。やはり舞台出身者は覚えさせられますよね。 赤井いドレスも似合って、けっこう目立っていたと思います。

同じく中野敦子役の諸塚香奈実

仲原舞のダブルキャストということで実力ある子なのかな~と思い、かなり注目していました。 間違いなく比較されますから。 少しだけ芸歴を見ると事務所がTNXということで、 ハロプロや、つんくプロデュース作品に出ているようですね。 「THE ポッシボー」のメンバーでもあります。

で、です・・・・・ う~ん、全然まだまだですね。 演技も、そして発声も。 観るとわかりますが、主要メンバーの中では一番劣ります。 特に発声がイマイチなのが一番気にかかる。 TNX枠があったとしても別にいいんですけど、主要キャストではないでしょ。 シングルの新人キャストに入れていたら全く問題はなかったのに、 なぜこちらに大抜擢されたのでしょうか? 彼女に舞台経験を積ませるにしても、この役はレベルが高すぎ。 だって、アニーで主役の仲原舞のダブルですよ。ありえない。 彼女もつらかったとは思うけれど、やるからにはもっと全力で望んでほしかったです。 頑張っているのはわかりますが、それを差し引いても舞台役者としてお話にならない。 次回、この屈辱をバネにして素晴らしい演技を期待します。

藤城千晶の本間理紗

東京メッツ時代のリトルメッツの印象が強いのですが・・・ そのためか確認するのがかなりたいへんでした。 だってすっごく大きく成長してましたから、昔のイメージが強いと気がつきませんよ・・・ しかも今回はメガネをかけてましたし。 演技自体は、さすがにしっかりしています。 劇中劇のところは、どこにいるかちょっと確認できませんでした。

同じく藤城千晶役の児玉絹世

所属は吉本興業。吉本もいろいろやっているんですね。 彼女は、まず普通にルックスがかわいいです。典型的なアイドル顔。 アイドル活動をしていたとしても人気が出たと思います。 ただ、驚きは芸歴。 なんと、筧利夫主演の舞台エビ大王に出演していたんですね! 観劇感想を読めばわかりますが、物凄いく熱い舞台でしたから。かなり勉強になったと思います。 その舞台に出演しているということは相当な実力者のはず・・・と思い注目しました。

アイドル的ルックスということで、表情も可愛いし、表情の作り方も上手です。 演技もじつにしっかりしていて見応えがありますし、声にも張りがあって聞き取りやすいです。 私的にかなり大発見。 吉本興業は彼女を主役にした舞台をすぐに作るべき(笑) それだけの原石ですし、磨けば相当光輝くと思います。 ただ一点。 セリフ口調はしっかりしているのだけれど、喋っているだけという印象もあります。 感情がイマイチこもってないんですよね、ただセリフを発しているだけという感じ。 ここを勉強して改善してもらえると、さらに良くなると思います。 他にもまだまだ未完成な部分はありますが、注目の舞台女優になってくれると嬉しい。 吉本も、もしかしたらゆっくり育てているのかもしれません。

井上志摩子役の赤坂さなえ

久々に彼女の演技、楽しみにしていました。 まず、ちょっと痩せましたね。アゴのラインがスッキリした感じ。 こういうところは気づくの早い(笑) 本人も頑張ったとのことでした(爆) さすがに1997年「アニー」ではテッシー役、さらには「ライオンキング」のヤングナラですから、 演技が下手なわけがありません。 この舞台でも彼女の演技は光ります。 仲原舞同様にカツゼツ、発声は抜群。 通常の学園の部分でもセリフは多いし、劇中劇でのセリフも多いです。 それだけ重要視されていたことは間違いないです。

ひとつ思ったことは、彼女は意外と地声が低いんですよね。 おそらく回りの女の子の声が高かったので、ひときわ低く聞こえました。 また、今回の場合は舞台特有の発声ではないため、ほとんどが普通の喋り方でした。 劇中劇の中で独特な発声法を使っている感じです。 そことのメリハリをつけたのかもしれません。 緑のドレス姿も似合ってました。 一応彼女の性格を知っている私としては、あいかわらずの天然ぶりで嬉しかったです(笑) 同性からも好かれるのは重要。

同じく井上志摩子役の松永裕子

彼女は昔からドラマにも出演していて、演技派のイメージが強かったのでかなり楽しみにしていました。 その予想通り、すばらしい演技でした。 とにかく表情付けがすばらしい。 表情豊かで観ていて楽しいんですよね。 声も良く出ていて舞台女優としてもしっかりしています。 劇中劇も存在感があり、カツゼツもバッチリでじつに光ります! 地道に頑張っているだけに、何か思いが肩入れしたくなってしまう・・・・・

中野綾子役の大石里紗

中野敦子の姉という役どころですが、 アイス渡して帰って、同級生だった小西美帆と話して、それで終わり・・・・・・・・ ツッコミどころありすぎなんですけど。 そういう演出なので、仕方ありませんが。 この舞台にとって必要な役なのかな~?

里美枝美子役の小西美帆

言うまでもなく、朝の連続テレビ小説「やんちゃくれ」ではヒロインをやったほどの実力の持ち主。 う~ん、別に特にどうこういうところはないのですが、 ひとつだけ言っておきたいところがあるんですよね・・・・・・ メイクがおかしい・・・ 先生のメイクにしてはきつい気がする・・・舞台特有のメイクなのかな? 先生ではなく、ちょっと「お水系」の雰囲気があるんですよ。そこはすっごく気になりました。

ダブルキャストとは別に、演劇部の中の新人ということで、5人は毎回出演します。 ただ、そんなにセリフが多いわけでもなく、どちらかというと経験を積ませる意味合いがあると思います。 そんな中でも、大西加奈子役の松井友里絵はなかなか演技が良かったです。 事務所はスペースクラフト、そしてキャナァーリ倶楽部所属ですか・・・ なるほど、初舞台にもかかわらず発声とか演技がしっかりしていたのはそのためなんですね。 けっこう気の強い役でしたが、5人の中では一番印象に残りました。 この子は伸びるでしょう。

木村環役の小池唯

彼女も初舞台。 新人部員の中では、けっこう目立つ役どころ。 ぶっきらぼうで単独行動をとることが多く、三つ編みに小顔とかなり目立ちます。 何か後半事件を巻き起こすのかと思えば、全く無し。 結局のところ、この前振りはあってもなくてもどっちでもいいような感じでした。 そういう演出なので仕方ありませんが。

高田真理子役の稲葉さゆり

彼女はとにかくルックスで目立ちます。舞台映えするオーラを感じます。 今回の舞台では彼女の本領を発揮できませんでしたが、これからいろいろ勉強するにしたがって、 どんどん成長していきそうな予感がします。 もしかしたら、これからけっこう注目の女の子になるかもしれない。 ただ、舞台ではなくアイドル路線に行くことも考えられますが・・・

唯一の男子役、鯨井康介

前述しましたが、阿井莉沙と長いキスをして、タバコをもらって、ほぼ終了(笑) 役得としか言いようがありません(爆) まぁ~これも演出なので仕方ありませんけれど。 何と言っても、本人が一番わかっていることでしょう。 それはともかくとして、過去に舞台出演をしていることから演技はうまいです。 特に視線の動かし方がうまい。 阿井莉沙との二人のシーンは、少しぎこちなさそうな演技(良い意味で)が印象に残りました。 なかなかやりますね! ただ、やや「さしすせそ」の「し」が聞き取りづらかったので、そこを頑張ってほしいかな? 「ひ」とか「し」とか、難しいですから。

総括

起承転結がイマイチハッキリしない、淡々とした舞台。 物語としての面白味には欠けますが、佐藤寛子の切なる演技はとても素晴らしかったです。

※敬称略
キャスト表