本文へスキップ

エターナルファンタジーはファミリーミュージカル公演サイトです。

1999.9年の夏休み 2007年観劇感想

満足度星星星星空星
公演時期 2007年4月6日(金)~10日(火) 
会場 吉祥寺シアター
作・演出 松枝佳紀
スーパーバイザー 金子修介
音楽 中村由利子(映画1999年の夏休みより)/MOKU
美術 小池れい
舞台監督 中西輝彦
照明 柳田充/長尾祐介
音響 筧良太
衣装 伊藤摩美
企画・制作  アロッタファジャイナ

あらすじ

1999年の夏休み。 帰省する少年たちに取り残されて美しき湖畔の「学院」に残ったのは カズヒコ、ナオト、ノリオの3人の少年。 平穏で穏やかな夏休み。 その静寂を破って登場した少年の名はカオル。 カオルを愛してしまったカズヒコ。 カオルに嫉妬するナオト。 対立する少年たちに心を痛めるノリオ。 みんなを翻弄し楽しんでいるカオル。 その4人の前に新たな少年が現れる。 少年の名はタクヤ。 意識を失い倒れていたタクヤの手に握られていたメモには 「本当のことに気付いてしまえば世界は終わる」 という謎のメッセージが書かれていた。 (公式サイトより抜粋)

感想

アロッタファジャイナ第8回公演です。 オスカーとのコラボレーションという感じでしょうか? 「ドラゴンファンタジー」でも使われた吉祥寺シアターは、 本当にどこの席から観てもみやすいです。 かなり後ろの方でも観やすいですから、私としてはすごく嬉しい場所でした。

基本は映画「1999年の夏休み」がベースのお話です。 私はこの映画を一度も観たことがありませんが、 観なくても話にはついていけますので、問題ありませんでした。 ただ、観ているともっと面白味が増したことでじょう。 この観劇感想も、観ていないことを前提にした感想となります。

ちなみに映画「1999年の夏休み」では、 大寶智子(和彦役) 水原里絵【深津絵里】(則夫役) 中野みゆき(直人役) 宮島依里(薫・悠役) となっています。 ビックリ!!宮島依里は水色時代にも出演した、あの人ですか・・・ 舞台観劇は奥が深い(爆)

話の内容は、

舞台はある全寮制の学院。初夏、 悠(宮島依里)が湖に飛び込んで自殺し、そして夏休み。 和彦(大寶智子)、直人(中野みゆき)、 則夫(水原里絵=現・深津絵理)の3人だけが家に帰らず寮に残った。 悠は和彦に想いを寄せていたのだが、 それを拒絶されたために自殺したのだと自分を責める和彦を、 リーダー格の直人が優しく包み込む。 そして下級生の則夫もまた、和彦を慕っていた。 そんなある日、悠そっくりの薫(宮島依里)という転入生が彼らの前に現れた……

でもって舞台ですが、これがまためっちゃ面白い!! 自分の中では相当なヒット作です。 話的には三つの話(だと思う)がからみあい、かなり複雑です。 1999年の少年4人の話、2007年タクヤの話、同じく2007年、とある劇団の話、 一応この三つの話しが交差するのですが、微妙にリンクしたり融合したりするので、 難解な話しではあります。 舞台の一応の流れ↓

ユウが死んで、カオルというユウとうりふたつの少年が現れ、 そこでまた騒動が起こり人が死ぬ・・・ そのままは話が続くと思いきや、 なぜか再びまたカオルが現れるところから物語が始まる・・・ つまりは、1999年の話しがループするんですよ。 1999.9年というのは、永遠に2000年にたどりつくことがなく、 そこで何度も何度もループしてしまうことを意味しているような感じでしょうか? 説明が難しい。

タクヤの部分では、 夢の中に、その「1999年の夏休み」に登場する4人の少年がなぜか現れ、 生と死が何度も繰り返される。 そのことについて、精神科医の相談を受けたりするのだが、 自分が今いるこの時間ですら、それが夢なのか本当のことなのか、 虚構と現実の世界にとらわれている感じ。

そしてもうひとつの流れとして、劇団。 「1999年の夏休み」をベースにして、「1999.9年の夏休み」という舞台を作ろうという話になる。 少年役を集い、十数人の少年たちが遠足気分でバスに乗って稽古場に向かう。 その時、車道に飛び出した猫に驚き、 運転手がハンドルを切ったことでバスは・・・・・という感じです。 ところが、ここも夢なのか現実なのか、劇団員ミッチの妄想なのか、判断が難しくなります。

そして、後半ではこの三つの話が混ざり合います。 いつまでも1999年の夢を見続けている4人の少年を目覚めさせるために、 タクヤが医師姿の劇団員(?)たちによって、夢の世界へと送り込まれる・・・という感じです。

じつは1999年に人類は滅びていて、ノストラダムスの大予言は当たっていた。 だが、今この時代「2007年」まで何事もなく平和な世界が続いている。なぜか? じつはあの少年4人が1999年を何度も繰り返すことによって、 2000年に到達していないからなのだ。 彼らを夢から目覚めさせることにより、人類は滅びる・・・ その計画を建てていたのがカミヤ教授であった。 タクヤはそんなこととは露知らず、4人を目覚めさせるために夢の中へと入りこみます。 夢の中では記憶が消えてしまい目的を忘れてしまうので、一緒に手紙を持っていくのですが、 これがタクヤが目覚める前にユウに見つかってしまい、密かに隠されてしまいます・・・ カミヤ教授を含めた医師団たちは、 仕方なく4人を強制的に目覚めさせる手段をとることになりました。 それは、彼らの心に大いなる絶望を与えることで、意識を目覚めさせようということでした。 そして4人はある選択を迫られることになります・・・・・ 内容を書いていても難しい・・・

独特な演出の雰囲気は、 南青山少女歌劇団の「放課後のトワイライト・シュート」にも通じる。 少年役を少女たちが演じることで、ボーイズラブなんだか、801なんだか、微妙ですが(笑) 観劇し終わった今でも、ちょっと理解不能なところもあります。 だが、それにつけても面白い!! お金のことをあまり言うのは嫌ですが、これで4000円はじつに安い! お金をかけて面白いのもいいけれど、バランスが必要だな~と素直に思いました。

SEも、音楽も、照明も抜群。じつにいいタイミングで音楽は流れるし、 照明の使い方もいいです。照明はかなりいろいろ変化しましたね。 舞台の基本は寮の部屋だとは思いますが、 場所的には劇団の稽古場だったり、バスの中だったりといろいろ変化します。 衣装がハーフパンツ(?)っぽい感じなので、 失礼ながら、ふとももが妙に色っぽかったです(汗)

途中、スポンサーなのか広告なのかわかりませんが、 コンビニエンスストアや、ファミリーレストラン、ホテルの名前がたびたび登場しました。 合い言葉のようですが・・・・・ ここは正直意味がわからなかったです。伏線のような奥深いものがあるのでしょうか? それとも全く関係ないものなのでしょうか?

最後のエンディングで、 自分としては、「全員がまた登場して記憶を無くした状態で現れる・・・」 というのは嫌だな~と思ったのですが、それが無くて安心しました。 それをやると、ちょっとコテコテすぎますからね。 誰でも考えそうな演出ですし(爆) で、何を言いたかったのか?ということになると、 私が感じたことだと、やはり親子の絆なのかな? そして、誰もがみんな生きるためにリンクしていて、 微妙な変化によって、歴史の方向性も変わっていくみたいな・・・ たぶん、この舞台ではそこまで何かを訴えるような舞台ではないかもしれないが・・・

それから、私の感覚として観客がカップルで観にくるのはどうかな~?と思いました。 これから生まれるかもしれない子供の話ですし、育て方等、いろいろ複雑にからむんですよね。 お互いにいろいろ思うところがあって話し合いができればいいのですが、 ちょっと不安になるところもあるので難しいところ。 あまり深く考えなければいいのですが、私はちょっと引っかかりました。

気になった役者

メインの5人 須藤温子 橋本愛実 阪田瑞穂 本田有花 安川結花 これはすごい。全員が少年役ですが、見事に演じきっています。 オスカーという強い事務所の威光にあぐらをかくことなく、練習をしているのがわかります。

タクヤ役の須藤温子

彼女の演技を見るのはココスマイル2以来です。 彼女の演技は独特なんですよ。 なんというかな、少し奥深い演技。 たしかバラエティー番組に出る時は、 この雰囲気とは全く違った三枚目的な部分も出すことができるのですが、 演技としてはじつに丁寧で、独特な間をかもしだします。 タクヤという役自体、やや夢遊病のようなところもあるので、 少しぼんやりした役作りなのでしょう。 凛とした姿もじつに似合います。 おそらく、バスのシーンが一番本当の性格に近いかな?(汗)

ナオト役の橋本愛実

自分としてはすごい美少女キャラをイメージしていたのですが、 けっこう男性っぽい雰囲気がありますね。 役柄的に、大雑把でどっしりした印象を受けました。 演技も、とりたててすっごくうまいというわけではありません。 2006年舞台「シオンの桜」では主演だったようですが、 どちらかといえば、まぁ~普通かな~と言えるレベル。 5人の中では一番印象は薄い。頑張ってはいるけれど、まだまだ物足りない。 もう少し覇気がほしいかな?舞台でのオーラは少ないと思う。

カズヒコ役の阪田瑞穂

とにかく、鬼のように凄まじいほどの美少女。 たぶん今年20歳かな?それでも美少女という言葉が通じるほどの完全無欠の美少女。 とにかく顔が小さい!!それでもって超絶的な美少女。ありえないぐらいの衝撃。 瞳に特徴があり、パッチリ二重で恐ろしいほど印象に残ります。 それでいて演技もできるからすごい。 たとえるのは難しいが、熊谷知花タイプかな?

なんとカオルとのキスシーンもあり。 観劇位置が正面ではなかったので詳細はわかりませんが、 一回目は本当にしてたような、してないような・・・ 二回目は直接の唇ではなく、ややずれてました。一回目もそうなのかな?

役柄的には真面目な雰囲気の役ですが、演技力はまずまずな感じ。 ユウを突き放す感じは、もっとオーバーな演技でも良いと思う。 少し真面目すぎるかな~という印象を受けました。 あまり感情を表に出すタイプではないのかもしれません。 ただ、後半にひとりひとり絶望を与えるためピックアップされる場面があるのですが、 そこでの叫び声は悪寒が走るほど素晴らしいです。

ノリオ役の本田有花

ココスマイルや、アルゴ等、 ファミリーミュージカル、ジュニア系では主役をはっていたほどの実力者。 下手なわけがありません。 メインキャスト5人それぞれに長台詞がありますが、 その中でも彼女が一番長かったように思えます。 特に後半のひとりひとりピックアップされる場面ですが、 長い台詞は完璧。しかも感情がじつにこもっている。引き込まれること間違いなしです。

ノリオという役は、 基本的にはどちらにもつかずその時の雰囲気によって流されるようタイプなのですが、 本田有花の明るく、ややコミカルな部分がうまく表現されていたと思います。 枠にきっちりハマッタ演技というわけではないので、 こういう自然な演技は、やはりベテランが負うべきでしょうね。 ちなみに語り部っぽい役は、 須藤温子と本田有花が全部ではありませんが担当したところが多いと思います。 ここはやはりベテランだからでしょう。

ユウ/カオル役の安川結花

安川結花はオスカー所属ではありません。 この役に関してみると、独特な雰囲気で透明感とはまた違った不思議な雰囲気の持ち主。 一回観ただけで、明らかに只者じゃないことがすぐにわかります。 芸歴を見ると相当な舞台役者ですから。 舞台女優特有の独特な雰囲気をもっていて、いかにもこなれている感があります。 その独特な言い回しも、まさしく舞台系。

ユウ役は消極的でおどおどしたタイプ。カオル役はボーイッシュで力強く積極的なタイプ。 たしかに違った演技を見せてくれたのですが、どちからというとユウの印象が強いんですよね。 だから、カオル役で積極的な演技をしても前の印象が残っている感じ。 オドオドした演技が絶妙でしたから。 また、彼女特有の独特な台詞の言い回しはユウ・カオルともに似ていて、 あまり差別化できてないように感じます。ここはちょっと残念かな。 カオルでいても、雰囲気的にはユウでしたから・・・・・ そっか。でもユウでもあるから、こういう演技でもいいのか・・・・難しいです、論評が。 ちなみに、どことなく仲村瑠璃亜を彷彿させますね。

ユウとカオルに関してはユウはカオルでありカオルはユウであり、 演じワケし過ぎずしなさし過ぎずという演出がついてました だからお客さんがカオルにユウが乗り移ったのかカオルがユウ自身だったのか 混乱させるのが今回の自分の役の難しいトコロでした ユウとカオルが全然違う人間であればもっと差をつけるコトが可能だったのですが、、、 もどかしいですよね(本人談) なるほど・・・・・・そいういう演出だったんですね。聞いてみないわからないです(汗) 劇団員役の他のメンバーはみなさん完全にプロなので、さすがにしっかりしています。 ちなみに看護婦1役の青木ナナは美人で目立ちました(笑)

総括

私の予想以上に、とても素敵な舞台でした。 ぜひとも再演をやってもらいたい舞台。 DVD出るかな~? もし出ることがありましたら、ぜひ観てみてください。私からもおすすめです。 ちなみにオスカーの回しものではありません。

※敬称略
キャスト表