◆ 死して罪禍の汚名を残すこと勿れ


◆公演時期   2007年2月24日〜3月4日
◆会場 新宿 白萩ホール
◆演出 神 佑介
◆制作 菅谷英一

あらすじ
太平洋戦争の最中、満州に残る日本軍人、民間人、中国人、朝鮮人の物語。

観劇感想
Bチームのみの観劇

テーマが「戦争」ということで、かなり重い舞台です。
太平洋戦争真っ只中の満州での出来事ですから。
舞台の場合はテレビのような制約がなく、自分たちの主義思想を思う存分述べることができるので、
「戦争」をテーマにする舞台は多いですよね。
なにより一番思ったことは、この脚本がよく研究されていること。
「戦争」がテーマだと、いろいろ苦労するところがありますが、
じつによく勉強している・・・ように思えます。
靖国、朝鮮人、憲兵、それが全てではないにしろ、考えさせられる問題です。

私の観劇感想もあまり偏った表現ができないのも難しいところ・・・
これは十人十色以上にさまざまな意見がありますから、
発言することに対して慎重にならざるをえません。
匿名でしたら自由奔放に書き込めますが、当サイトではそうはいきません。

基本はストレートプレイの舞台。休憩無しの約1時間50分。
歌もダンスもありません。そのぶん演技が重要視され、膨大な長セリフもあります。
舞台役者として当たり前のことではありますが、セリフを覚えるのはたいへんだな〜と思いました。

さて、いきなり荒居直子が登場。
中国人の劉春蘭という役で、片言の日本語が喋られるという設定。
黒髪にクリクリッとした瞳にチャイナドレス・・・・・
かわいい(爆)
かわいいと言うしかない・・・・・
肌つやも良く(汗)まれに見るヒロインキャラにびっくり!
ココスマイルシリーズでは、何度も見たことがありますが、
どちらかというと、おどおどする役であったり、気の強い役であったりで
王道のヒロイン役は初めてかもしれません。
歌唱力にも定評がありますが、今回は演技のみ。それでも十分に彼女の実力を発揮できました。
片言の日本語も絶妙、本当に中国人?と思ってしまうほど。
父、母が殺されたことを知った後の、愕然とするところもじつに見事。
今回、改めて荒居直子の実力を再確認することができました。
ハッキリ言って、かなりいいです!

常に銃をちらつかせていましたが、観ているこちらとしてみると、
「ど〜せ見せかけだけで撃たないんだろ〜」と鷹をくくっていました。
が、発砲(爆)
これは本当に驚きました。緊張感走りますね。
いままで劇場内が静かであったぶん、インパクトは強い。

派手なM(音楽)ではありませんが、使い方はとても良かったと思います。
演技オンリーで歌が無いため、地味ながら効果を発揮していました。
どういった音楽をかけるのか?音楽の選択は意外と難しかったかもしれません。

ストレートプレイで緊張感も走る舞台。
「この後ど〜なっていくのか?」
観客も出演者とともに、のめり込んでいく感じです。
ただ一点、あくまで私の意見ですが、ちょっと気になったところがあります。
それは、後半でひとりひとり何をしたいか、自分の意見を述べるところ。
個々の切実かつ素直な気持ちを述べる重要なシーンであることは間違いないのですが、
ここが急にゆっくりなテンポになり、あまり感情移入できませんでした。
出演者の方は感情がこもって泣いているのですが、私はしらけぎみ(私だけかもしれないが)
今まで流れるようなテンポが、ここだけゆっくりとしたリズムになり、
逆に心を刺激しなかったのかもしれない。ここだけですね、気になったのは。

後半に行けば行くほど衝撃的な展開。観ていて私的にはすごく楽しい(爆)
もちろん、楽しんじゃいけないのですが、展開としてアリだなという感じです。
クライマックスシーンもじつにいいです!
人間味あふれる舞台、痛みが伝わる舞台、心にグッときますね。

気になった役者さんは・・・

松平上等兵役の片山亮
舞台上だとかなり老けて見えましたが、チラシだと若いんですね(爆)
それだけ役に心底捧げたという感じでしょうか?
朝鮮人でありながら、東亜の平和の為に日本軍に志願するという難しい役どころです。
あえて自然な演技ではなく、やや誇張された演技。
上等兵という階級もあり、こき使われる意味合いがあるので、これは致し方ないことでしょう。
特に上官との区別をあらわすためにも良かったです。
演技的にもじつにすばらしい。言うことないし、やっぱり本当に舞台役者だな〜とつくづく思う。
吉川伍長を信頼するその姿も、じつに清々しかったです。

谷口憲兵役の渡辺晃
この舞台の悪役です(笑)
う〜ん、この人は只者じゃないでしょ?すっごくうまい!
これだけ嫌味で観客をも敵に回す演技は、なかなかできませんよ。
観客に良い意味での不快感を与える演技はじつに秀逸!
観客全員が敵意むき出しですから(笑)
セリフ、特にその張りのある声!!
銃の音以上に迫力を感じました。
彼が影の主役であることは間違いない。

樫山一等兵役の半間拓
徴兵ではなく、自ら志願をして軍人になった、一本筋の通る、おかたい真面目人間。
それであるがゆえに、上官の命令は絶対。
思考も硬直になりがちで柔軟性に乏しくなり、危険な方向へ歩み始めてしまう・・・
そういった役柄ですが、じつに実直的な演技でした。
あちら(?)方面に踏み出してしまった彼の変化は、なかなか見応えあります。
ある意味、彼は戦争の被害者であり、この舞台の象徴的な部分だと思います。

大谷伍長役の平林真琴は言うことなしに上手い。
準主役のような位置づけなのかな?
観ていて引き込まれるものがある。
成田二等兵役の橘瑛輝はうまい。「帰れる!」という嬉しい表情が印象的。
吉川伍長役の高見映搾はプロフィールを見ると初舞台のようだが、
じつに堂々とした演技で、初舞台にはとても思えない。
野村上等兵役の鈴野正俊も初舞台。
たしかに他のメンバーに比べたら見劣りする部分があるかもしれない。
ただ、この舞台の個性としては、性格の異なった軍人として光りを放つことができたと思う。
大きな思想的なものは持ち込まないで、自然と徴兵され、自然と軍人の規律になれていった・・・
そんな感じを受けます。

中村松子役の今井沙那恵
この舞台の中で、一番コメディチックで、ムードメーカーでトラブルメーカー的な役割。
であれば、今井沙那恵で問題ない(爆)
チェンナムの夢、プリンセスハムレット、ココスマイル、東京メッツ等、
芸歴はすさまじいものがある彼女に対して、この役はうってつけ。
また、「戦争」という重いテーマゆえに、
その中でどうやって個性を引き出すかは難しい役どころだと思う。
それをこなしてしまうところが今井沙那恵のすごいところ。
セリフ回しや演技レベルは言うこと無し。
私的にダンスが観られないのが残念だが・・・

長崎に原爆が落ちたという事実を知った時の半狂乱の姿は、
今までの明るい雰囲気の性格からは一転する。
明→暗。そのギャップがあるからこその人間くささを表現する場面。
ここは正直難しいと思う。
今まで気が強く明るい性格だった子がここまで変わる!
というのを印象づけさせる演出であることは百も承知だが、
あまりにもギャップがありすぎて、ちょっと引くんですよね、私の場合は。
これはそういう演出なので仕方ありませんが。

藤田婦長役の松山みか
これからの子ですね。
あわてることなく落ち着いた感じは、良かったと思います。

高野看護婦役の菊池美遊
ちょっと待って!めっちゃかわいいんですけど(爆)
ほのぼの〜としたふわふわ〜とした、ボケ系の長身の女性です。
実年齢よりもすごく若く見えます。
どうやら子役としても活躍していたそうですね。
演技的には雰囲気そのまんまって感じ(笑)
独特の雰囲気の演技がいいですね〜
舞台役者というよりは、まだアイドルの延長線のような気もしますが、
今後の成長がじつに楽しみ。
演技的なのものとはまた別に、
その存在感やインパクトとしては、他メディア等でも十分に活躍できることでしょう。

総括
重い「戦争」がテーマでしたが、脚本が秀逸でした。
そして、男性陣の役者がすばらしいし、迫力あります。
私的にはかなり大満足です。
すぐにとは言いませんが、徐々に大きなキャパシティにしていっても面白いかもしれません。
エンターテイメントの舞台ではありませんが、また違う客層に受ける可能性がありますから。
どこかの大手メディアで取り上げられるといいな〜なんて思います。

家族向けとは言えませんが、夏休みの時期。特に8月15日。
家族みんなで戦争について考えることがあっても良いのではないでしょうか?
そしてこの舞台のことを思い出してみる・・・なんてこともアリかな?

(敬称略)


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