◆ いつか青い空の下で〜はじまりの章


◆公演時期   2007年2月10日〜12日
◆会場 荻窪メガバックスシアター
◆作・演出 滝 一也
◆振付 木戸友香、金本美智子、安江友和
◆音響 門井裕枝
◆照明 下川正記
◆衣装 松田由起子

あらすじ
二つの国、イーオスとラッセルは戦争をしていた。
その国境に近い島の真ん中に小さなお店があり、
店主サラが、クリネ、ルル、シャノーラという3人の少女とともに酒場を営んでいた。
そんなある日、メイとシーという見慣れぬ二人がやってきた・・・
(サイトより一部抜粋)
観劇感想

コメディ「ドラゴンファンタジー」とはうって変わって、「戦争」をテーマにした重い舞台です。

ひとつ思ったのは、観劇対象者をどこに設定しているのかな〜?なんて考えました。
自分の見方からすると中学生以上でしょうか?
小学生としてはちょっと重く、意味が伝わりにくいです。
特に大人のやりとりは理解不能でしょう。
子役出演があるため子供の観劇も多く、内容がうまく伝わっているかは微妙なところです。
「ドラゴンファンタジー」のように単純明快ではありませんから。
そこまで考えているかどうかはわかりませんが。

それと、やはり「戦争」をテーマにすると、いろいろな考え方の人が多いので、
解釈が非常に難しいです。十人十色以上ですから。
さらに政治的な意味合いも・・・って、まぁ、そこまで深く考える必要もありませんが。

一番気になったのは最後のネタバレ。
〇〇だった・・・・・・というのは、私の中ではいらない設定。
ここまで人間味あふれ、戦争の醜さを演出をしていながら、
SFにもっていくのは納得いかない(汗)
そっちにもっていくと、全てが嘘に思えてしまう。
戦争をしているがゆえの「痛み」が大事なのに、それが欠けるのはいただけない。
普通に孤児の設定でいいと思う。
あくまで私の意見ですが。

最後のバイオリンも良くわからない。
あまりにも唐突すぎる。
ある程度、物語の中で伏線をはっておき、それが最後に開花される・・・
というのならわかるが、いきなりでしょ?あれは。
しかも、自分の中では一応サラが主役かな〜と思ったのですが、後半はメイがメイン。
結局、みんなが主役ということなのかもしれませんが、
ある程度はひとつの柱を大事にしてほしいと思う。

結局のところ、シーの正体もわからず、イヴも行方不明のまま。
サブタイトルに「はじまりの章」と入れてあることから、続編もあるのでしょうか?
ただ、あんまり続編続編でいくのはどうかと思う。
一話完結で観たいのに、その続編があるっていうのは出し惜しみしているような気がする。
劇団☆新感線のドラゴンロックシリーズ(簡単にいうとルパン三世)とかは、
同じキャラクターが登場してもOKなんですけどね。
それを観たいがためにチケットを取りますから。
コメディならいざしらず、シリアスもので続編は聞いたことがないけれど・・・・・

司令官の娘という理由だけで、彼女の言葉によって全軍が行動を停止する・・・
というのはかなり無理があるような(汗)
まぁ〜おとぎ話ですから、いいかな。

気になった役者さんは・・・

メイ役の小早川知恵子
「ドラゴンファンタジー」でも登場していましたが、あの時はセリフ無し。
今回はちゃんとあります(爆)
すごく愛らしい女性ですね!
セリフづかいも、けっこうかわいい。
シリアスもコメディも柔軟に対応できる・・・という印象を持ちました。

サラ役の佐藤千亜紀
ふてぶてしく、どっしりとかまえる肝の座った姐御肌の女主人。
ひじょうに難しい役だと思います。
おそらく、子役上がりでこういう役はできないかもしれません。
今の子はみんな可愛らしいし、声も高いし、役が固定されかねない。
そういった意味で、佐藤千亜紀の演技はかなり光りました。
間違いなく舞台が引き締まりましたね。

演技は抜群にうまいです。
男性的雰囲気な低音タイプだと声が聞き取りづらいこともあるのですが、
彼女に関しては全く無問題。重厚な声質が劇場内に響きわたります。
勝手な想像ですが、ある意味ツンデレ系(爆)
ツンツンしているところが、逆に魅力的。
私はけっこう惚れました(笑)
ラジとの恋愛関係ももっと見たかったな〜
メイとの三角関係か(爆)

ラジ役の高橋一郎
ある意味、一番美味しい役でもある(汗)
役柄とマッチしているというか、じつにいい感じ。
もしかしたら、彼が一番一般の人なのかもしれない。
曖昧な日和見主義の代表者という・・・・・・
そんな人間くささあふれるところがいいですね!

シー役の小野田美夕
彼女は素晴らしい。
ドラゴンファンタジーとはまた違った少年(?)の役ですが、
印象が異なり、とても新鮮でした。
表情のつけ方もうまいし、何より瞳、目の動かし方が印象に残っています。
けっこう丁寧に演技していると思いますよ。

ダンスシーンも秀逸。
柔軟なダンス、さらにはターン時の首のブレが全くありません。
やりますね!!
宝塚の男性役的な雰囲気をかもしだすその姿。
間違いなく今後も伸びていくことでしょう。要注目の女の子だと思います。

クリネ役の桐原真奈
彼女の演技は何回か観ていますが、今までで一番いいですね!
彼女の雰囲気(?)にあった役柄ということもあってか、
自然とその役を受けいれている感じです。
いままでは、ややコテコテの演技が多かったのですが、
おそらく、今回が初めて流れるように自然な演技ができたのではないでしょうか?
子役の中でこれができたのは小野田と桐原。
川内と上之薗も頑張ってはいるけれど、まだまだこれからです。

発声がようやく、本物の舞台声になりつつあります。
表情付けもいいし、セリフもしっかりしているし、笑顔も抜群。
シーに詰め寄るシーンは彼女の得意分野かも(爆)
ダンスはやや独特な感じですが、なかなかいい感じです。
雰囲気がじつにセクシーだし魅力的。

もともと彼女はルックスはいいです。間違いなく美少女キャラ。
ただ、私が見るかぎり今まではそれが「役」とは結びついていませんでした。
しかし、今回の役に関してはそのルックスと役が絶妙にマッチしています。
今まで足りなかった女優としての「華」を身につけました。
これはすごく重要。
オーディションとはまた別の意味において、
プロデューサーや演出家の目に止まり、ピックアップされるかもしれません。
それだけ今回に関しては素晴らしい。

ルル役の川内優花
ルックスはコケティッシュな感じで、じつに可愛らしいです。
顔の部分部分のパーツが小さいからそう感じるのかな?
おそらくファンもついていることでしょう。
演技的には、よく頑張っていると思います。
ただ、やや目の動きが気になるので、次回はそこを改善してくれると嬉しいかな?

シャノーラ役の上之薗花奈
彼女はセリフがしっかりしている。
比べる必要はないけれど、現時点では川内優花より上。
演技もじつに丁寧。
ただ、小野田、桐原と比べれば、川内も含め、まだまだ演技演技している部分が見受けられる。
子役なので、当たり前と言えば当たり前なのですが、
次回さらに成長している姿が観られると嬉しいです。

総括
戦争という重いテーマの舞台。
観客は子供もたくさんいるため、その演出は難しかったことと思います。
ある意味、子役目当ての客層に対し、
メガバックスコレクションの魅力を伝えようとしたのでしょう。
そこからの集客はとても重要ですから。

間延びした部分、キャストの間のタイミング、まだまだ改善の余地はあることと思いますが、
大人向けとしてはじっくり観られる舞台でした。
なにより、メイ、サラ、ラジの個性が明確でわかりやすかったです。
子供向けとしては、まだ微妙でしょうね。
ただ、シリアスな戦争ものとして、あのネタバレは好きじゃないです。
本当にガッカリきましたから・・・・・・
舞台という現実逃避としての意味合いがあったとしても、「痛み」のある舞台であってほしい。
祖父が軍人だったこともあり、戦争の「痛み」について話をよく聞かされました。
そのため〇〇だったというのには、かなり拒否反応があります。

次回作があるのかな?

(敬称略)


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