公演時期 | 2005年12月8日~12月23日 |
---|---|
会場 | 青山劇場 |
作 | 洪 元基(ホン・ウォンギ) |
訳 | 馬 政熙(マ・ジョンヒ) |
演出 | 岡村俊一 |
振付 | 近藤良平(コンドルズ) |
美術 | 加藤ちか |
コスチュームデザイン | 本間正章(マスターマインド・ジャパン) |
音楽 | からさき昌一 |
照明 | 松林克明 |
音響 | 山本能久 |
あらすじ古朝鮮のある時。 エビ大王の寝所に、あの世からの使者、日食と月食が現れる。 命が満ちたため、あの世へ行かなければならない・・・ だが、エビ大王はまだ死ぬわけにいかなかった。 自分の死後、この地を託すべき息子がいないのだ。 7人の子供はいるものの、全て娘。 「息子が生まれるまでは、あくまでも生き続ける。 それが王たる者の使命だ」 王の強い意志に動かされ、日食と月食は「息子を生む方法」を授けた。 それは、数年前に黄泉江に捨てた7番目の娘を探し出せば、 王に息子が生まれるという・・・・・ (パンフレットより、一部引用) 感想ちなみにチケットの売れ行きはかなりよく入手困難らしいです。 2階席は空いているかもしれませんが・・・ まず最初に「エビ大王」のエビですが、海の生き物である海老のことではなく、 韓国語の「父親」を意味します。 また、もうひとつの意味として「こわいもの」があります。 悪いことをしている子供に向かって、 親が「そんなことをしていると、エビがやってくるよ!」 と言って、人さらいを意味することもあるようです。 (「エビ大王」の作家 洪元基さん、エビ大王役の筧利夫さんのインタビューより) この舞台は2002年ソウル公演芸術祭、 「作品賞」「戯曲賞」を受賞した作品で、韓国の戯曲です。 それを翻訳したものです。 簡単に言うと、韓国にある昔話を、いろいろ組み合わせ、 現代風に、特に民族問題を重視するようにアレンジしたという感じでしょうか? う~~~ん、テーマが重い(爆) 家族向けではないです。 本当に舞台が好きな人でないと入り込めない感じ。ただ、席はほぼ満席に近いです。 親が、男子が生まれないことを悔やみ、 過去に一番下の娘を川に捨てたことが起因であることを知り、 自分の娘を探し、そして男子を産める女性を探し出すというストーリー。 言うのは簡単ですが、内容はすごく複雑な背景があります。 よく頭を整理しないといけないでしょう。 また、川に捨てられた子が成長した娘、パリデギ。 彼女の時代に翻弄される姿は、見ている観客にも、 いろいろなものを感じとることになります。 重いテーマゆえ、 途中途中で、月直使者の橋本じゅんさんと、日直使者の河原雅彦さんが登場し、 小ネタというか、笑いを提供します。 これも、作家の洪元基さんが言っているのですが、あまり重くはしたくないそうです。 で、なぜかここで不思議な雰囲気。 それほどのギャグを言っていないにもかかわらず、会場内がザワザワ。 う~ん?どうしてかな~と思ったら、 月直使者の橋本じゅんさんは、「劇団☆新感線」の方なんですね。 客層として、「劇団☆新感線」のファンもたくさん観にきているるようです。 しかも、剣轟天役とは・・・ なるほど~、そうなるとうなずけます。 知らない人は、見てみてください。 演じている役者さんは、とてもパワーがいるでしょうね。 テンポが早く、舞台進行も早く、どんどん進む感じ。 そして、もちろん見ている観客はそれに対応していかなければならないため、 起きた出来事を頭で理解する思考能力をフル回転させ、 かなりのパワーを必要とします。 私も観劇していて疲れました・・・ 休憩無しの2時間ちょっとの舞台ですから。 ちなみに、この舞台、2回公演の時もあるんですよね。 2回・・・・・これは、やっている役者さん、たいへんですよ・・・ 2回連続して観劇する方も、もちろんパワーいります・・・ 気になった役者エビ大王役の筧利夫さん。舞台出身ということもあり、ものすごいパワーでした。 熱く、しつこく、ねちっこく、ドロドロとしていて、毒々しい演技。 この迫力は、すさまじいものがありました。 自分の男子を産める女性を探すため、 また、その起因となった娘を探すため、 エビ大王の残虐無比な荒々しい怖さが、筧氏の瞳、表情から伝わってきます。 本人の脳内の理解として、 「息子を授かってから、死にたい。それが王の使命」というものもあり、 彼の悲哀も、うかがい知ることができます。 ほとんど彼のストレートプレイにちかい舞台ですが、セリフは膨大。 それをほとんどかまずに流暢な口調で述べるのは圧巻。 パリデギ役のSAECO(サエコ)さん。初舞台とは、とても思えません。 素晴らしい演技でした。 パンフレットに書かれていた、「エビ大王」の作家、洪元基さんのインタビューにおいて、 パリデギについて、 「ピュアで純粋であった少女が、運命と戦いながら、積極的で力強い母親になっていく」 というものがありました。 彼女はまさに最適。 初登場のシーンは、まさしくピュアで何も知らない少女の演技。 明るくさわやかで、母親思いの優しい性格をうまく表現していました。 それが、お米と引き換えに嫁に迎えられることによっての悲劇。 子供を産み、平和で安楽な生活も束の間、今度は別の女性によって夫を奪われ、 最愛の息子も奪われます。 ここから、精神崩壊にも似た息子への愛情表現。 かなり見応えあります。 私のイメージとしては、 役者でもあり、TBS「温泉へ行こう」の主役もしている、 加藤貴子さんに近い感じです。 小柄で、ファニーフェイスで、少しアニメ声。 ピュアな少女としての部分は、そのままの感じで本当に可愛らしいです。 しかし、後半の荒れ狂う母親の姿は、 小柄な体からは想像つかないほどの熱く激しい演技でした。 これでまだ19歳!!おどろき・・・・ 日テレジェニック2003でもあり、モデルもやっている方ですが、 普通に何年もやっている舞台女優さんかと思いました。 テレビ等でのドラマ出演はあるみたいですが、舞台は初。 にしては、とてつもなくすごかったです。 相当な努力をしているでしょうね。 稽古中も、モデルでの写真撮影をおこなっていたようですが、 その笑顔とは裏腹に、相当な稽古量であったことは間違いありません。 でなければ、ここまでできませんよ。 これから要注目の舞台女優さんでしょうね。 末娘役の佐田真由美さん。気が強く男まさりの役。 日本人ばなれした異国の雰囲気漂うルックス、 さらに凛としたたたずまいは、舞台上でもひじょうに目立ちます。 舞台は二回目のようですが、セリフも問題ないですし、 本人の本当の性格はわかりませんが、この役には合っていたかもしれません。 一つ派、伊達暁さん。パンフレットの写真と、舞台上では雰囲気が違います(汗) 後半は喋るシーンが無くなりますが、 その言葉を伝えようとする表現は、なかなか見応えありました。 末将勝役の佐藤アツヒロさん。彼を観るのは、いかりや長介さんが主演だった「ありがとうサボテン先生」以来です。 「サボテン先生」の時とは全く違う役です。 荒々しく、自分の理想のために突っ走る感じ。 しかし、とてもいい役者になりましたね! 男が男に惚れるみたいな印象です。 この役自体が、何もない状態から、自分で兵を組織して、分断した国をまとめるという、 ある種、織田信長のような感じで、誰もが一度はそれに憧れる・・・みたいな感じです。 筧さんの、ねちっこいエビ大王は見ているとちょっと疲れるので(笑) 佐藤さんのスカッとした一本気な感じは清涼感にあふれ、観ている方にしてみると、 少しホッとするんですよね。エビ大王のみだと、かなり疲れます(爆) 彼にとってもこういった役は初めてのようで、 これからさらに飛躍することでしょう。大満足! エビ大王の娘役のひとり、五十嵐りさちゃん。「雅」でも活躍しているので、 舞台でのりさちゃんにも、当然のことながら注目していました。 舞台出演は「アマデウス」に続いて二回目。 ダンスシーンもありますが、それほどたくさんではありません。 やはりストレートプレイが本質てすから。 その中でのりさちゃんですが、 やはり、舞台の進行が早く、セリフも早く、テンポも早いということで、 かなりたいへんだったようです。 技術うんぬんよりも、このテンポに合わせるのがたいへんなんですよね。 役柄的には、エビ大王の7人いる娘役のひとりなので、 目立った演技や行動はありません。 アンサンブルに近いです。 セリフは一言ぐらいでしょうか? 仕方ないですけど。 ほぼ、メインキャストたちのストレートプレイですから。 総括筧さんの熱い演技が印象的な舞台。 出ている出演者たちのレベルは高く、見応えある舞台でした。 ただ、話はとてつもなく重いので、覚悟をして観にいかなければなりません。 ※敬称略 |