NHKエル・ムンド「ミュージカルへ行こう!トニー賞とミュージカルの楽しみ」感想&文字起こし

   

2013年ミュージカル作品賞「キンキーブーツ」
そのブロードウェイ・プロデューサーの川名康浩氏も登場とあって、
いろいろ新しい発見もあった番組でした。
個人としては日本人初ですからね。


ブロードウェイで1本作るのに、
だいたい5~6年かかるとのこと。
プロデューサーが企画を立ち上げて、
演出、脚本、音楽等、誰に担当してもらうのかを決める。
脚本作りと楽譜作りにだいたい3年~4年。
なんとなく、海外ドラマの「SMASH」を見ているので、
流れがわかります。
まさにそんな感じ。
5、6年もかかることから、
流行りとか、時代背景も変わるかもしれないが、
そのために普遍性のあるテーマを選ぶとのこと。
音楽担当にシンディ・ローパーを選んだのは、
演出・振付を担当しているジェリー・ミッチェルとのこと。
映画版の「キンキーブーツ」もありますが、
今回の舞台でその楽曲は全く使っておらず、
全てシンディ・ローパーのオリジナル。
音楽を担当したシンディ・ローパー。
ブロードウェイと音楽業界とでは、
いろいろとゴタゴタがありそうですね。
ブロードウェイ独自の空間の作曲家、そんな閉鎖的な部分もある。
だからこそ、ミュージシャン、音楽業界出身の自分が、
ブロードウェイに受け入れてもらえるのか、ナーバスであったとのこと。
それゆえの、オリジナル楽曲賞をしての涙。
プロデューサーは、
まず企画を立ち上げ、
クリエイティブチームを構成して、ワークショップ。
演出、脚本、音楽、アクター(出演者)で、実験的に作り上げていき、
ある程度形ができた時に、
100人近い投資家をリハーサルスタジオにいれてプレビュー。
最終段階で投資家に出資を募るが、
最初の段階はプロデューサーの持ち出し。
これは大変。
「SMASH」でも金銭がらみはよくやってました。
今は1本作るのに、10~20億円とのこと。
ちなみに投資家のことをエンジェルと呼ぶそうです。
出資が決まってから、ようやくニューヨークでリハサール開始。
形になったら地方都市で公演。
シカゴやシアトルなど。
「トライアウト」
これも「SMASH」でやってました。
一カ月近く「トライアウト」をして、
毎日、脚本を変えたり、台本を変えたり、音楽も変えたり、キャストチェンジもする。
とにかくお客さんの反応を見て、変えていく。
予想してないところでお客さんがわいたり、
ここは盛り上がるだろう、というところで静かになったりと、
そういった反応を見ながら修正をしていく。
それが終わって、もう一度ニューヨークで0からリハーサル。
「トライアウト」の反応がいいからと言って、
いきなり「ブロードウェイ」にはいけない。
メインの赤いブーツを何足も作ったとのこと。
長さ、ヒールの高さ、1センチ感覚で変えたりする。
また、赤と言っても、いろいろな赤があるので、その微調整。
セクシーさ、さらにはバランス、そもそもきちんと立つかどうかも。
「トニー賞」を取ることによる、ロングラン(最低でも1年)の保証。
これが大きいとのこと。
たしかにブロードウェイに行って、
見る時間があまりなかったら、
とりあえず「トニー賞」の舞台は観たいですよね。
川名康浩氏が初めてプロデュースした作品が、
2007年の「リーガリー・ブロンド」
ほとんどがプロデューサーの勉強だったとのこと。
プレビュー中、劇場に毎日通う。
気づいた点をノートに書く。
というのも、口頭で演出家に話すと、いざこざの原因にもなるし、
そもそも残らない。
ノートであれば記録に残る。
毎日その作業をしていた。
基本は演出家に任せるが、気づいたところは伝える。
客席に座って客の反応を見るし、直接感想を聞くこともある。
「カム・フライ・アウェイ」(2010年)
「リーガリー・ブロンド」で、
他のプロデューサーから川名康浩には「passionパッション」(情熱)があると言われ、
一緒に仕事をしたいとのこと。
川名康浩いわく、1作目の「リーガリー・ブロンド」は、
その作品に惚れ込んでしまい、回りが見えなくなってしまった。
2作目からは、ただ惚れ込むだけでなく、
もうひとつの自分が俯瞰から見て、
「本当にこれでいいのか?これではダメだろう」
と両方の立場で見られるようになったとのこと。
通常は1枚150ドル近くのチケット代金。
それを「ラッシュ・チケット」では、
公演当日、売れ残った席を3000円近くで20枚~50枚販売。
しかも、180ドルと同じ席。
そのかわり朝早く並ぶ。
「行列」って、けっこう日本のイメージが強いけれど、
アメリカも普通にありますね。
他にもファンサービスのひとつとして、
開演2時間半前からのチケット抽選会。
当たれば27ドルで見られる。
しかも一番前、2列目が多い。
高額なチケットを買えない、
若い人にも観られるチャンスという意味合い。
こういったことは、ここ10年とのこと。
プロデューサー同士がルールは無いものの、推進している。
プログラムは無料。
とは言うものの、日本的な豪華なプログラムではありません。
ちょっとペラペラな感じ。
ただ、そこに記載、クレジットされることがブロードウェイでは名誉。
「キンキーブーツ」というタイトルの前に名前がクレジットされることは、
大変な名誉。
このプログラムには、「オープニングナイト」限定のプログラムもあり、
コレクターアイテムとしては価値が上がったりする。
ブロードウェイは劇場街の40の劇場がある。
毎晩パフォーマンスが行われ、毎晩5万人が観ている計算になる。
もちろん40の劇場全てがファーストクラスのレベル。
そうでないと、そもそもブロードウェイで上演されることすらない。
観客とパフォーマーのキャッチボールが重要。
一緒に作り上げていく。
声をかけてもいいし、歌ってもいいし、その場で踊ってもいいし、
誰も手を叩くところでなくても、叩いていい。
自由。
うーん、そうなんですけど、私としては、前の人がスタンディングしたら、
しなきゃいけないのかと、困りものではありますが。
これは日本とアメリカの感覚の違いかな?
歌舞伎や古典芸能でそういうのはありませんから。
「掛け声」はありますが。
いざ観たいと思うけれど、英語が苦手・・・
という方はネット環境があれば、
事前に概略を日本語でチェックしておくといいとのこと。
映画があれば、映画を先に見て、流れをチェックしておく。
違いもわかるし、良い意味で映画を裏切るとのこと。
ここは流石!
「musical」は「music」+「al」
音楽は大前提だけれど、音楽だけであれば、CDやコンサートでいい。
音楽だけでなく、アクティング、振付、演出、コスチューム、セットのデザイン。
チームワークの総合芸術を楽しむ。
深いな~
他のミュージカルも取り上げていましたが、
「マチルダ」は子役がメイン。
日本のように出演時間、労働時間の制限はありません。
その変わり、必ず家庭教師がついていて、
楽屋でも勉強させるそうです。
この舞台、日本はどうかな?
「ピピン」はリバイバルの作品で、
新しい要素としてサーカスの魅力満載。
というか、出演者の体の柔らかさ尋常ではない・・・
「シルク・ドゥ・ソレイユ」をそのまんま舞台にしている感じ。
川名康浩氏のエルムンドとは前述したとおり「passion」
「passion」を持ち続けていればチャンスが生まれる。
チャンスをつかむ時にも「passion」が必要、
「passion」があれば人とのコミュニケーションもうまくいく。
本当にいいお話をありがとうございました。
舞台、演劇好きな人にはこの番組必須でしたね。
※ちなみに「SMASH」はシーズン2で終了なんですよね。
寂しい。
※そして完全に別件ながら、
出演者のマギーという女性が、
ミニスカなので座っている間、ずっと抑えていたこと。
本人、そこが気になって気になって、話しに集中できてないでしょうね。
視線もスタジオのモニターでチェックしているようで、
物凄く泳いでいる。
(進行として、カンペを見ているとも思いますが)
ドライ、リハ、ランスルーと、やるはずなのに、
なぜ気づかないのかな。
そこだけが残念。

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