◆  『アニー』

◆公演時期   2002年4月27日〜5月19日
◆会場 青山劇場
◆演出 ジョエル・ビショッフ
◆演出補 伊藤 明子
◆翻訳・訳詞 瀬戸 千也子
◆振付監修 名倉 加代子
◆振付 橋本 さとみ
◆音楽監督 栗田 信生
◆編曲・歌唱指導 呉 富美
◆訳詞 片桐 和子
◆タップ振付 藤井 真梨子
◆美術デザイン ピーター・ウルフ
◆照明デザイン 沢田 祐二
◆音響 本村 実/益川 幸子/加納 未来
◆舞台監督 古賀 裕治
ミュージカル『アニー』の原作者
◆脚本 トーマス・ミーハン
◆作曲 チャールズ・ストラウス
◆作詞 マーティン・チャーニン

あらすじ

1933年、ニューヨーク。
孤児院で暮らす、赤毛の少女アニー。
孤児院には父親や母親を亡くした子供たちが、たくさんいます。
ただ、アニーの両親だけは、まだわかりません。
『すぐに引き取りにまいります』という、
自分が赤ん坊の頃に書かれた両親の手紙・・・・・
その言葉を信じて、アニーは11年間支えにしてきました。
しかし、いつまでたっても両親は迎えに来てくれません。

ついに、アニーは孤児院を出る決心をします・・・・・


観劇感想

今回も、演出はジョエル・ビショッフ氏が担当しています。

率直な感想として、去年より出来がいいと思います。
まぁ、一昨年と比べるのが筋なんでしょうけど・・・ここは置いといて(汗)

たしかにダンスシーン自体は少ないです。
よくミュージカルというとダンスシーン、歌唱のシーンが注目されますが、
『ダンスの無いミュージカル』『歌唱の無いミュージカル』も多く見受けられますので、
それほどこだわる必要はないな〜と最近思い始めました。

最初の部分は、たしかに淡白な感じがして、面白味にはかけるかもしれません。
ただ、じわじわ〜っとくるんです。
これが演出の『妙』なのかな?
演技に重きを置いたことで、役者さんたちの演技に力が入ったせいかもしれません。
舞台に引きずりこまれていくような・・・不思議な感覚でした。
こんなこともあり、ダンスが少ないことも、あまり気になりませんでした。

パンフレットに書かれているジョエル氏の言葉、
『ニューヨークの初演のアニーは一人もダンサーが出演していない』
が、物語っているように、あまりダンスシーンにこだわってはいないみたいです。
まぁ、オリジナルに近くやるか、アレンジを加えるかは、
演出家によって変わりますから・・・

『Hard knock life』の演出も・・・特に凄いという印象は無いですね。
全員が輪になってモップを持ち、それが倒れないうちに次の人がまたモップを掴む、
この演出が目玉だったのかな?
私的には、バケツを舞台前に押すところが印象深いですね。
オーケストラピットに入ったらどうするんだろうとか考えてました(笑)

前述しましたが、ダンスシーンが少ないため、
観客の子供たちが飽きて、ざわつく場面がありました。
そこはちょっと気になりますね。
ファミリーミュージカルだから、飽きさせない演出をしないと・・・

そして、去年はたしか『ハニガンさん』と言っていたところを、
『ミス・ハニガン』になっていました。
ここはけっこう大きいです。こっちの方がいいでしょう。
やはり『ハニガンさん』は違和感ありましたから。

『N.Y.C』の部分、去年は唐突にタップキッズが登場し、意味不明でしたが、
今回は劇中劇?(アニーが観ている舞台)として登場しました。
タップキッズのみならず、アニーズたちも登場しています。
なかなか見応えありました。
前回よりは、遥かにいいです!

それでもって手旗信号。
特に深い意味があるのかどうかはわからないのですが、
まぁ、奇麗にそろっていて良かったですよ。
舞台としてエンターテイメントは必要だと思います。
ちょっとジョエル氏の言葉とは矛盾しますが・・・・・

気になった役者さんは・・・

アニー役の岡田レインちゃん。

ゆめちゃんのアニーと比べると、優しい、穏やかなアニーという印象を受けます。
柔らかな表情がとても素敵です。
歌唱力はちょっと厳しいですね。
別にヘタというわけではないけど、もうちょっと、これから頑張ってほしいな。

ダンスシーンが少ないためかどうかはわかりませんが、
アニーとウォーバックスの二人の会話シーンが、
不思議と感動的な印象が残りました。
これはレインちゃんアニーの方です。
自分でもビックリです。

どちらかというと、ゆめちゃんのアニーは、やや完成されたイメージがあります。
それに比べてレインちゃんの方は少し荒削りで未完成・・・・・
だけど、正直、荒削りなアニーの方が好きなんですよね〜!
これからどんどん吸収していく感じがします。
千秋楽が楽しみです。

同じくアニー役の川綱ゆめちゃん。

現時点での実力では、ゆめちゃんのアニーの方が上だと思います。
ひとつは歌唱力。ムチャクチャうまいというわけではないけど、
声量があるし、劇場内によく響いていました。
そして演技。
レインちゃんのアニーと比べると、ゆめちゃんは、やや気の強いアニーという感じ。
『私にお任せ!』という姐御肌的な印象を受けました。
ミス・ハニガンとのやりとりも、気の強い同士って感じで面白かったです。

さらに、言わずにいられないのが『涙』
ウォーバックスさんが自分の両親の形見のペンダントに触れた時、
アニーは感情をむき出しにしますが、そこでゆめちゃんアニーは号泣します。
観ているこちらはビックリです!
当然、涙流しますし、鼻も出てる・・・なかなかやるな〜と思いました。
でも、よくパンフを見ると、オーディションの段階ですでに泣いていたんですよね。
それだけ、泣く演技はお手の物って感じなのかな?

彼女の場合、天才肌タイプではなく、努力型タイプのような気がします。
役にのめり込み、自然と涙が出るのではなく、努力によって涙を流すという感じ。
どちらにしても、大した実力であることは疑いありません。

蛇足ですが、彼女、左ききなんですね。
ペンでウォーバックスさんをくすぐる(?)ところの位置が、
ゆめちゃんとレインちゃんとでは違っていました。

モリー役の藤井ゆりあちゃん。

演技も良いし、ダンスもうまいです。なかなか良かったですね。
ただ、ちょっと面白かったのは、ケイトより、背が微妙に大きかったのが笑えました。

同じくモリー役の国分鈴可ちゃん。

可愛らしいルックスですが・・・ちょっとイマイチかな?
演技はマズマズだけど・・・表情もイマイチだし、
特にダンスシーンは・・・・・・
これから頑張ってほしいです。

ケイト役の大崎望絵ちゃん。

彼女のダンス、演技も良かったです。そして表情も豊かですね。

同じくケイト役の加藤結菜ちゃん。

うまいです。
ただ、ちょっと演技演技しすぎて鼻につく感じがするんですよね。
子役では良くあることなんですけど。
もうすこし、自然な演技がほしいな〜なんて思いました。

テシー役の中西絵里香ちゃん。

どっかで聞いた名前だな〜と思ってたら、彼女『GANg』の舞台に出ていました。
けっこう目立つ役なので、印象に残っています。
歌はマズマズかな?

同じくテシー役の佐伯聖羅ちゃん。

彼女も演技うまいです。
でも印象的には歌かな?
けっこう心に残る歌声でした(歌う場面少ないですけど・・・)

ペパー役の稲川実花ちゃん。

アニーズの中で一番印象に残ったのが彼女です。
いじわるな役もうまかったし、それとのギャップもあってか、
『N.Y.C』の部分の明るい表情がピカ1!
最初誰かと思ったぐらい、すごくいい笑顔をしていました。

ジュライ役の松田実里ちゃん。

ジュライ役の部分では、けっこう冷たく怖い印象を受けます。
今までの実里ちゃんのイメージとは違うところを見ることができて、新鮮でした。

そのイメージもあってか、『N.Y.C』の部分では、前述した稲川美花ちゃん同様、
すてきな笑顔を見せてくれます。私的には、こっちの笑顔が好きだな〜
役柄だから仕方ないんですけど・・・

ストリート・チャイルド役の清宮愛結花ちゃんと新津つくしちゃん。

言わずとしれた、私が応援している清宮愛絵理ちゃんの妹の愛結花ちゃんです。
とりててすごい演技をしているわけではないので、
あまり感想できないんですけど(笑)
ただ、今回はストリート・チャイルドは、かなり美味しいです。
『N.Y.C』の部分はマントを着て登場するため目立ちますし、
フィナーレでは主役のアニーのすぐそばにいます。
フィナーレだけ観れば、どちらが主役かわからないほど(笑)

さて、演技はあまりどうこう言えませんが、
数少ない登場シーン、『鉛筆買わないか?』は、
正直、つくしちゃんの方が良かったです。
『鉛筆買ってほしい!』という気持ちが伝わる喋り方でした。
愛結花ちゃんは・・・もうちょっとかな?

ただ、アニーと花を受け渡す場面は、
(お金を払って、花を渡して、またお返して・・・というところ)
愛結花ちゃんの方がテンポが良くて面白かったです。
つくしちゃんの方は、テンポがずれてしまい、イマイチでした。

ダンスシーンはほぼ互角でしょう。足さばきを見ていたのですが、
二人とも上手いですね。
心情的に愛結花ちゃんの方を良く見ていたせいか、
軽やかなステップを踊る姿を見て感動しました。
ここまでやってくれるとは・・・嬉しいです!

表情のつけかたはまだまだですけど、
これは舞台慣れしていけば大丈夫でしょう(ちょっと楽観的ですけど)

そして、タップキッズの児玉まりなちゃん。

おおっ!
まず第一声『体が細くなってる!』

まぁ、初めて見た人はそうは思いませんが、
ココスマ2再々演の頃に比べたら明らかに痩せています。
これは嘘偽り無しです。

彼女は表情見ているだけで楽しいですね。
もちんろダンスシーン、タップシーンも見応えあります。
ダンスの切れはなかなかものですよ。ぜひチェックしてほしいですね。
私的には、自分でタップをして次の人に『ハイ!』とか言って受け渡すシーン。
言い方が難しいですけど、まりなちゃんらしさが出ていて良かったです。
そこが彼女の魅力かな?

オリバー・ウォーバックス役の平野忠彦さん。

特にいうべきことはありません。素晴らしすぎます。

ミス・ハニガン役の岡まゆみさん。

いいですね〜!
私的には去年の麻丘めぐみさんがイマイチだったので、より素晴らしく見えます。
演技的には問題ないでしょう。素晴らしいハニガンでした。
どちらかと言えば可愛らしい感じのハニガンかな?
外見ではなく内面的に。

そして歌唱力。ビブラートをけっこう効かせてるため、
好き嫌いわかれるかもしれません。
私は大好きですね。すっごく耳に心地良かった。
本間ひとしさんとのかけあいは最高!

ダンスシーンがはたくさんあるわけでありませんが、足はかなり上がります。
ここは流石って感じですね。

グレース・ファレル役の岩崎良美さん。

これは去年が去年だっただけに、すっごく素晴らしい印象を持ちました(汗)
演技はいうことないですね。穏やか〜な感じで気品あふれる仕草。
このへんは流石だと思います。

歌唱力は、元歌手だけのことはあり、上手いです。
去年はグレースのソロ、かなりカットされていましたが、
今回は逆にグレースのソロが多かったです。これは言わずもがな・・・でしょう。

ルースター役の本間ひとしさん。

去年に続いての登場ですが、今回もやはりすばらしい!
演技というか間のとりかたというか、本当にすばらしい!
マッジ夫妻の演技、ここは賛否両論別れるところですが、私は好きです。
なまり言葉、悪くないと思いますよ。

そして歌声。岡めぐみさんとのかけあいは『絶妙』の一言。
ほんと、メチャクチャいい!
ここを何回も聞きたい感じです。

リリー役の胡桃沢ひろこさん。

8年ぶりの舞台ということは・・・
やはり、私が観た『大草原の小さな家』からのようですね。
けっこう期待していたのですが、まぁ、マズマズって感じです。
演技はなんとか観れる感じですが、歌ですね・・・

岡さん、本間さん、そしてリリーの三人で歌う場面。ほとんど歌ってません。
あそこまで歌ってないというのは、おそらく、わざとでしょう。
それとも、その場面だけマイクを切ってあるんでしょうか?
近くで聞いたところでは、歌っていましたから・・・
いずれにしても、あまり聞き応えがないゆえの演出かもしれませんね。

また、その部分で小さなダンスシーンがありますが、
足の上げもほとんどない・・・・・
観ていて、ちょっと悲しくなってしまいます。

バンドルス役の森山大輔さん。

巨体のせいかもしれませんが、目立ちます。
おそらく、大人キャストの中でもかなり印象に残ったと思います。
なんといっても穏やかな表情がいいですし、巨体ながらの俊敏な動きも素敵!
けっこう注目ですね。

未来のスター役の坪井美奈子さん。

やはり彼女の歌声はすばらしいです。
う〜ん、感動ですね。
ただ、音響のせいかもしれませんが、
ちょっと音とかぶる部分がありました。そこが聞き取りづらかったです。
おそらく、これから改善していくことでしょう。

そしてまた表情がいいです
エクボがまたかわいい(笑)
子役から大人になって、ほとんど変わらないっていうのも珍しいです。
見応えありました。

ルーズベルト大統領役の嶋崎信夫さん。

迫力があっていいですね〜!
ちょっと表情怖いのですが(笑)
でも、このくらい重厚な方がいいと思います。

総括

私的には、とても楽しめる内容でした。
ダンスシーンが少ないというのも、ある程度なれるとそれほど違和感ありません。
そのぶん、演技に重点を移し、最初のうちは淡白ですが、
徐々に盛り上げて行くような演出方法が垣間見えました。
(その頂点は、ウォーバックスさんがアニーのペンダントを取ろうとするところ)

千秋楽がますます楽しみになりました。


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